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2008年9月25日 (木)

グレン・グールドのバッハ『二声と三声のインヴェンション』

Gould_invention
J. S. バッハ 
 インヴェンションとシンフォニア(全曲) (ニ声と三声のインヴェンション)

グレン・グールド(ピアノ)

CBS FDCA575

学生時代ミュージックカセットで毎日のように聞いていたグールドのインヴェンション。二声のインヴェンションの第1番ハ長調なら何とか弾き通せる程度にはピアノが弾けるようになったので、楽譜と首っ引きでこのグールドの録音を聴き、第4番ニ短調を流暢に弾く程度にはなりたいと少しがんばったが、右と左のそれぞれの単独弾きではスムーズなのだが、両手になるととたんにたどたどしくなり、まだまだ物にはなっていない。平均律とまで行かずとも、この曲集を爪弾くことで、相当の楽しみが得られることは確かだ。

昨夜たまたま「ワンツースリー」とかの変なアクセントのテレビ番組で、茂木健一郎が脳を刺激する世界のピアニストベストスリーというのを紹介していて、第3位がこのグレン・グールドだった。そこで、同じ番組を見ていた子ども達も、これまで何度もグールドのピアノ録音を聴いているはずなのに、テレビのアピール力で特にあまり興味のなかった次男が急に興味を持ったようで、今晩寝る前に、グールドが1980年に自分で選曲した「リトル・バッハ・ブック」を少し一緒に聴いた。

さて、このグールドのインヴェンションだが、通常の楽譜では、二声と三声の順に並べられているものを、わざわざニ声と三声の同じ調性の曲をセットにして、彼なりの理論で、配列した独特の曲順になっている。そこが面白いといえば面白いし、困ったといえば困ったことになる。オリジナルのCDでもそうなのかは分からないが、このCDでは、ニ声と三声がセットになって1トラックとなっており、単独で三声を聴こうとするのは結構面倒になる。

複旋律の音楽の基礎として、右手と左手を完全に独立させて弾く最初の曲集になるが、多くの豆ピアニストがこの曲集で最初に躓くとも言われている。観賞用として聞いても面白い曲集なのだが、自分で弾いてみようとすると、カノンでは、どうしてもどちらかの手に意識が行ってしまい、指がもつれてしまうので、ここを辛抱してがんばるのとそうでないのとでは、その先の音楽の豊かさが違ってくることは確かだろう。

グールドのピアノは、ミュージックカセットの時にもヘナヘナした音色が聞こえ、プリペアドピアノのようだと思ったが、安定したCDでも同じ音がする。相当ピアノをいじった頃の録音らしい。

参考記事:シフのJ.S.バッハ『インヴェンションとシンフォニア』

エッシェンバッハの『インヴェンションとシンフォニア』(カセットテープ)

追記:2008/09/27

カセットテープを引っ張り出してきたところ、その当時この曲順の配列がどのような関係調に基づくものか調べてメモしてものが出てきたので、間違っている部分もあるとは思うが備忘録として書きとめておこうと思う。

第1番ハ長調 ⇒ 同主調 ⇒ 第2番ハ短調 ⇒ 平行調 ⇒ 第5番変ホ長調 ⇒ 属調 ⇒ 第14番変ロ長調 ⇒ 平行調 ⇒ 第11番ト短調 ⇒ 同主調 ⇒ 第10番ト長調 ⇒ 属調の平行調 ⇒ 第15番ロ短調 ⇒ 下属調 ⇒ 第7番ホ短調 ⇒ 同主調 ⇒ (ここからB面)第6番ホ長調 ⇒ 下属調の同主調 ⇒第13番イ短調 ⇒ 同主調 ⇒ 第12番イ長調 ⇒ 下属調 ⇒ 第3番ニ長調 ⇒ 同主調 ⇒ 第4番ニ短調 ⇒ 平行調 ⇒ 第8番ヘ長調 ⇒ 同主調 ⇒ 第9番ヘ短調

最後に第9番ヘ短調の二声と Con spirito 三声 Andante espressivo BWV795 を持ってきたのは、角倉一郎氏のパンフレットの解説によるとこの曲がバッハの生前から高く評価されたもので「切々と迫る表現の深さと比類のない対位法技術」が特徴とされる。また、全音の楽譜の解説にも異例なほど楽曲に関する賞賛が見られる(3つの主題は・・・人間の裸になった魂の奥底の叫びであることに間違いない。・・・3つの姿が縦横に表現されるというのは、まったくバッハの持つ空間の偉大さにうたれるのである)。 その意味で通常の曲順で聴くよりも深い感慨が得られるこの曲を最後にもってきたグールドの慧眼には、今回聴き直しても改めて恐れいった。

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ディスク音楽04 独奏」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
自己流でピアノをいじっていた時期がありました。
バイエルを練習しながら、飽きると無謀にもインベンションに挑戦、ハ長調の頭の数小節と奮闘していたのも昔の思い出になりました。

手元にあるCD(30DC780)も二声と三声がセットで1トラックになっています。
私の場合はLP時代からその順番できいていたので、かえって
二声と三声が別に収録されている盤には違和感を覚えたものでした。

最初に聴いた時にはターンテーブルの調子が悪いんじゃないかと思えたくらい、確かにヘナヘナの音でした。

はじめまして!
いつも楽しく拝見させていただいております。H.Kobayashiと申します。
望様はココログをお使いですよね。私もそうなのですが、望様のような、画面をいっぱいに使うブログのデザインが、格好いいな、と思っておりました。今回、図々しく、そのコツをお尋ねする次第です。
大きめの文字も、見やすくて、とてもよいですね。
お暇なときにでも、お教えいただければ、などと勝手なお願いです。
これからも、素敵なブログを!

天ぬきさん、こんにちは。

グールドのインヴェンションの正規盤CDもやはり二声と三声とをセットにしていたという情報ありがとうございます。

LP時代からお聴きですか。私の場合もアナログ時代のカセットテープからの付き合いなので既に30年近くになります。アナログ時代には、カセットテープでトラックの頭出し機能などがありましたが、LPでは盤面の途中に針を(オート下降でさえ)落とすのは盤を傷つけそうでほとんどやらなかったので、メディアが与えてくれるがままに聴いていたように思います(勿論A面、B面はありましたが)。カセットテープのパンフレットを改めて確認しましたが、やはりニ声と三声を一緒に書いてあり、タイミング表示も合計の時間が書かれていたので、このような編集(収録)は、グールド自身の意図によるものなんでしょうね。

この曲集、これまでチェンバロではヴァルハ(ヴァルヒャ)のエアチェックで抜粋を聞いたことがありましたが、音盤を入手したことがないので、レオンハルトなど、聴いてみたいと思っています。

自宅の電子ピアノはキーのタッチがヘナヘナの古いものなので余り最近は弾きませんが(変わりにこのようにキーボードをたたいてはいますが)、また挑戦してみたくなりました。

H.Kobayashiさん(貴ブログではこう表記されていましたので)、こんにちは。拙ブログをお読みいただきありがとうございます。

>画面をいっぱいに使うブログのデザインが、格好いいな、と思っておりました。今回、図々しく、そのコツをお尋ねする次第です。大きめの文字も、見やすくて、とてもよいですね。

私は、ココログでは、このブログは、有料の中でも廉価なベーシックというものを使っております(当時はフリーはなかったものですから)。また、その後フリーも使っております。

そのフリーの方は、バックアップ用に使っており、デザインもいじっていないのですが、確認してみたところ、ログイン後の管理ページのデザインの部分で、フリーとベーシックでは機能が違うようです(フリーにはデザインを細かくいじれる機能がないようです。)

ちなみにベーシックでは、ログイン後にデザインを選び、「テーマを変更」を押すと、「ページ全般の設定」などの項目が現われますが、そこで 列の横幅:中央列: 可変 と選ぶことにより、横幅一杯に記事欄を広げることができるようになったりします。また、フォントも「記事表示欄」の本文のフォントなどを中などに選択することで変更することができました。

ご参考になれば幸いです。

ブログのデザインに関して、アドバイスをいただき、ありがとうございました。
私も横浜線沿線に住んでおります。きのうきょうと、横浜はまずまずのお天気ですね。よい休日をお過ごしください。

H.Kobayashiさん、今晩は。

ブログを拝見したところ、デザインを変更されていて驚きました。

>そのフリーの方は、・・・確認してみたところ、ログイン後の管理ページのデザインの部分で、フリーとベーシックでは機能が違うようです(フリーにはデザインを細かくいじれる機能がないようです。)

フリーでもできるんですね。上記の認識は間違っていたようで、どうも失礼しました。

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