事件ファイル #14 殺しのプレリュード ~ショパン 「24の前奏曲」
事件ファイル #14 殺しのプレリュード ~ショパン 「24の前奏曲」 依頼人 ディープ内藤 (高橋ひとみ) 職業 女流ミステリー作家
毎年恒例というわけではないが、先週は夏ばてで伏せっていた。身体だけでなく、精神的にも疲労がたまっている感じで、やる気も起きない。それまでの数日、自宅から最寄り駅まで歩くのがしんどいと感じたり、通勤カバンがやけに重くなっったと思ったりして、自分でも疲労が蓄積してきたなとはわかっていた。臥せりのきっかけは、夜中に下痢をして睡眠が十分取れなかったことで、その疲れがどっと表に出た感じで、意欲も湧かず三日間寝て過ごした。家においてあった少年漫画を連続して読んで時間をつぶそうとしたが、ときどき睡魔に引き込まれ、三日間相当眠ったし、夜もそれなりに眠れたので、やはり心だけでなく、身体も相当まいっていたのだろうと思う。
この三連休でようやく回復して、ビデオ録画しておいたこの番組を見た。全体的に取り上げられたショパンの『前奏曲集』の楽曲への様々なアプローチ解説は結構面白かったが、探偵物語としては少し行き詰った感があったかなという感想だ。
第4番のもの悲しい曲は、この曲集中唯一 ESPRESSIVO の表情記号が付けられた曲であり、またパリでのショパンの葬儀の際に演奏された曲だという。これまでも淡々とした美しい曲だと思っていたが、この曲で肝心なのは半音階づつずれていく左手の和声だということが、仲道郁代の実演とためし引き(メロディーを速く弾くと「エリーゼのために」の冒頭のよう)でよく分かった。
バッハの前奏曲とフーガ(平均律クラヴィーア曲集)に影響を受けたことは確かだが、なぜ「プレリュード」のみの曲集を作曲したのかは、この曲集のもっとも基本的な謎だが、玉川大学の准教授が私論と断りながら、それぞれの曲が次の曲への前奏曲になっているのではと語っていたのが面白かった。
また、非常に変わった第2曲は、いつまでも調が不安定であり、左手の伴奏部も少し発展すれば現代音楽のようだとの仲道さんの指摘も面白かった。
題名の「殺しのプレリュード」というのは、ミステリー作家に扮する高橋ひとみの書こうとする本の題名だが、これまでもこの探偵事務所の事件をネタにして数冊書いたという設定だ。助手や知り合いが探偵物語を書くという趣向だが、どうもこの辺りが少しストーリー的な行き詰まりだと感じたところだった。
さて、やはりこの曲の中心は、第15番の『雨だれ』で、単純なダカーポ形式のように思っていたが、穏やかな長調の部分が陰鬱な短調の部分に比べて短いというのは意外だった。
そして、最後の第24曲のラストの低音の単音の三音の意味は・・・
取り上げられたのは、10曲に満たなかったのは残念だった。前奏曲というだけあり、どの曲にも物語が付随しているように感じるから。
ショパンのこの曲は、LP時代からポリーニの録音で親しんだ曲だった。ちょうどA面とB面が第12曲と第13曲を分けていて、その変わり目が非常に鮮やかだったように感じていたが、CDになってからは続けて聴けてしまうので、そのような場面展開的な妙はあまり味わえなくなってしまったようだ。
全24曲を聴きたかったので、先にアシュケナージ盤についてもこのブログで記事にしたCDを取り出してきた。そのときも結構面白さを感じたが、今回聴きなおしてもショパンの音楽を堪能することができた。
実演では、仙台での学生時代に中村紘子女史のリサイタルでこの曲を聴きいた。バルトークの「戸外にて」とこの曲が主要プロであり、結構意欲的な演奏だったように記憶している。
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久しぶりの新作となった「名曲探偵アマデウス」。が、次はまたも一ヶ月近く(=4週間)間が開いてしまいます。今回は、ショパンの作品28「24の前奏曲」です。短い曲が多く、たくさんの曲がありますが、それらをまとめて取り上げるという形になり、更に「前奏曲集」なのかという所にスポットを当てているということで、これまでとは少し違う構成になっていました。また、物語の展開も今までと少し違っていて、問題を抱えた依頼者がやってくるのではなく、「ネタを恵んで~」と言って女流作家・ディープ内藤がやってくるという形であり、そ... [続きを読む]
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