カーゾンのグリーグ、グルダのシューマン ピアノ協奏曲
グリーグ ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
12:40/6:06/10:20
サー・クリフォード・カーゾン(ピアノ)
エイヴィン・フェイエルスタード指揮ロンドン交響楽団〔1959年6月録音、ステレオ録音〕
シューマン ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
15:24/5:24/10:38
フリートリヒ・グルダ(ピアノ)
フォルクマール・アンドレア指揮ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団〔1956年9月、ステレオ録音〕
またしてもグリーグとシューマンのピアノ協奏曲のカップリング。ただし、以前のR.ゼルキン、アントルモンの時と同じように、別々のピアニストによる演奏のカップリング。
カーゾンのグリーグは、フェイエルスタートの指揮と併せて古くから名盤として知られたもので、デッカ(ロンドン)からフェイエルスタートによる『ペールギュント』の音楽とのカップリングを見たことがあったが、グルダによるシューマンのピアノ協奏曲というのは結構珍しいものだと思う。それも、1956年という古い録音ながらステレオでの録音であり、またアンドレアという珍しい指揮者によるヴィーンフィルの演奏というのも面白い。(指揮者のフォルクマール・アンドレア Volkmar Andreae については、「スイスの音楽一家、アンドレーエ家」という記事や「スイスの指揮者たち」という、時折拝見しているBlog 「鎌倉・スイス日記」さんが作成されているホームページ「スイス音楽紀行」に所収の情報が詳しい。)
さて、カーゾンのグリーグだが、紀元前原住民であったケルト系の住むグレートブリテン島南部をローマ人を占領し前線基地を築き、そこにノルマン・コンクェスト(ヴァイキング)といったゲルマン系の民族の南進活動により、北方系のゲルマン人が混合したのが現代イギリス人の元になったものだと思うので、ブリテン人サー・クリフォードとノルウェー人グリーグは、そのような歴史的血縁的にもいろいろありそうな同士のものだけあり(?)、カーゾンのモーツァルトも素晴らしいが、このグリーグも相当聞かせてくれる。さらにフェイエルスタート(この人の経歴はまったく知らないが名前からいってノルウェー系だろう)の指揮がこの曲をよく知り尽くしたもので、普通のオーケストラからは聞こえてこないような音楽が聞こえてくるのも面白い。
F.グルダのシューマンは、その少し後のスワロフスキーとのモーツァルトでの自由奔放な演奏とは違い、至極まともな演奏だ。先日のツィメルマンのような細部への拘りやルプーのような非常に丁寧な仕上げとは違うが、若いグルダの達者なテクニックによって感興に満ちた協奏が繰り広げられる。音楽が滞らずにどんどん前進する趣きだ。
意外にR.ゼルキンもグルダもあまりシューマンの独奏曲では名を聴かないのは、ゼルキンの時にも感じたが、不思議だ。これほど協奏曲で見事な演奏を繰り広げているのだから、ソロももっと演奏してくれてもよかったと思うのだが。特に、グルダなどは達者な技術で、シューマンの錯綜した楽譜も問題なかったと思うので。
第一楽章は、ほどよくテンポを揺らしながら颯爽と駆け抜ける。しかし、引き締まった演奏なので、アルゲリッチのような恣意性は感じない。また第ニ楽章では、夢想的な音楽をオーケストラともども思いを込めてて奏でている。第三楽章は、雄弁なグルダのピアノが縦横無尽に駆け巡る。オーケストラのテンポ設定なのか少しユックリ目に感じるテンポ感だが、若い頃の方がピアノが巧かったとグルダが冗談半分で言ったのもあながち冗談ではなかったような腕の冴えだ。アンドレアの指揮は、それほど万全なものではないようで、第三楽章の合わせが難しい部分などやっとこ切り抜けたという感じだし、楽器のバランスや印象的なフレーズの強調など(解釈といえばそれまでだが)、グルダのピアノに対抗し支えるものとしては、少しオーケストラとしての協奏が物足りないように感じた。
よくステレオで録音されたと思えるほど1956年という初期のステレオ録音で、一応真ん中にピアノや木管が定位し、左側からヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと聞こえるようになってはいる。ピアノの音色は美しく録られているけれど、弦はハイ上がり気味でざらつきがあるし、トゥッティでは音の濁りが出るところもあるので、ヴィーン・フィルらしからぬ粗野な音色がする部分もある。それでも1956年の録音としては驚くほどの音質に仕上がっている。
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