『ハリー・ポッターと死の秘宝』 日本語版を読んだ
2008年7月24日 (木) 7/23 ハリポタ最終巻日本語訳が発売されたが という記事を書いて原書読みに挑戦していたのだが、妻が図書館から運良くこの最終巻の日本語訳を借りて来られて読み終わったというので、家庭内で又貸ししてもらい昨日の土曜日ほぼ一日かけて読了した。
これまでも、ペーパーバックの"Harry Potter"シリーズを何冊か購入して、第5巻の"Harry Potter and the Order of the Phoenix" は、数年前ネットの読解サイトの力を借りて完読したが、今回のは日本語訳1年前だったけれど、ハードカバーということもあり、通勤バッグに入れて途中で読むわけにも行かず結局挫折し、日本語訳を読むことになってしまった。
途切れ途切れではなく、落ち着いて一気に読めたこともあり、またこれまで伏線が過剰に張られ過ぎていて、欲求不満が溜まっていたのをこの最終巻がそれなりに解きほぐしていたので、(よく使う言葉だが)「カタルシス」が得られたこともあり、(これまでの謎解き・説明編としてこの一巻の独立した作品としての価値を落とすような感は否めないが)、それなりに面白かった。
2007年7月28日 (土) ハリー・ポッターシリーズ これまでの6巻までに残された自分にとっての疑問集という恥ずかしい項目を列挙したので、どの程度解明されたかを一応書いてみようと思う。
(1) なぜハリーはヴォルデモートに殺されなかったのか?
リリー(ハリーの母)の愛が守ったとされるが・・・
⇒ 第7巻である程度解明されていた。少し理解しにく部分は残ったが。
(2) リリーの姉妹、ペチュニアは純粋のマグルなのか?なぜペチュニアは嫌いな姉の
子であるハリーを守るのか?ダンブルドアに脅されたからなのか?
⇒ これも詳しい説明があった。この辺りの回想が非常に面白かった。
(3) シリウスが消えたヴェールの向こうとは何か?
⇒ ゴーストとしてこの世に残らない本当の死の世界ということらしい。
(4) ダンブルドアは、本当に死んだのか?
⇒ これは、第7巻の要点。最後の方まで謎は明らかにされない。
(5) ゴーストとしてのこの世に残る魂とそうでない魂の違いは?
⇒ この世への未練のようなものらしい。血まみれ男爵の謎も解明される。
(6) 魔法省はイギリスのみに存在するのか? 三校対抗などでヨーロッパの
他の国にも魔法学校があるということは、それぞれの国にも魔法省が
あるのではないか?それらの人々が今回の魔法界の騒動にどの程度関
与するのか?それともただ傍観するだけなのか?
⇒ 魔法省はどうやらイギリスにのみ存在するようだ。この設定は、初期設定
(構想)の段階で設定してしまったのだと思うが、その後、読者層も全世界に
広がったこともあり、最後まで違和感が残った。「外国の」魔法使いたちも関与
はするが、主体的なものではなかった。
(7)ディメンターや巨人族は、マグル界に姿を現すのか?ハグリッドの弟はどうなる
のか?ドラゴンや魔法生物(ユニコーンなど)はどうなるのか?
⇒ これも第7巻ではそれなりに解決されていた。
(8)ヴォルデモートの動機は何か? 単に永遠の生命を持ち、魔法界を支配したいだ
けなのか? そのことが彼にとってどのような意味があるのか?
⇒ 最悪最強の魔法使いという割には、動機がお粗末だった。ただ、
ヴォルデモートが「完全無欠の」「悪の」魔法使いならば、そもそもこの物語自体
成り立たないのだから、この設定自体はやむを得ないのかも知れない。
(9)ピーター・ペテグリューはなぜ裏切ったのか?
⇒ 裏切りは、彼だけではなかった。
(10) なぜ多くの魔法界の人々がペテグリューのペテンにだまされたのか?
⇒ 魔法界の人々は結構、騙されやすいようだ。少なからず、「ひとがよい」人物が
多いようで、「ひとが悪い」人物ほどこのシリーズでは目立った役割を果たすよ
うだ。
(11)魔法省の役人にはアンブリッジのような不正義な魔法使いが多いのはなぜか?
⇒ 本当になぜだろう。体制へ順応能力が高い=「白も黒といいくるめる」のが役人
の特質だから?
(12)ハリーの父親の家系はグリフィンドールなのか?
⇒ 第7巻で、さらにすごい物語が語られた。
(13)スネイプは本当に裏切ったのか?
⇒ これが第7巻の目玉だった。言ってみれば、全7巻は、スネイプと
ハリーの物語とも言える。
(14)ハリーの友人ネビル・ロングボトムの両親が殺されなかったのはなぜか?
⇒ これは疑問として残る。それに比べて、それ以降ではあまりに魔法使い
やマグルが簡単に殺されている。第7巻は非常にダーク(dark)である。
(15)ハリーの両親が多くの遺産を残せたのはなぜか?先祖からの遺産か?まだ
若かったジェームズとリリーにそれほどの収入があったとは考えられないだろう。
⇒ これは疑問としての残ったが、(12)と関係があるのかも知れない。
これについては、「純血」魔法使いの家系だったと思われる、ハリーの父方の
祖父母や父の兄弟姉妹たちなどの設定が抜けているのではないかという疑問
が新たに湧いてきた。ハリーの父、ジェームズの家系については、本巻を除いて
は、あまり触れられていなかったのではないか?
(16)魔法界の予言は達成されるのか? (ハリーでもネビルでもヴォルデモートを
倒す可能性があったというが、そのような不確かなものなのか?)
⇒ 予言は、やはり不確かなもののようだ。経済の予想もそうだが、それを知った
人はそれとは別の行動を選択するようになるという側面もあるのかも知れない。
第7巻を読んで、図らずも一番泣けたのは、意外な人物(複数)の活躍とその最期だった。
この物語全体として、現実の世界に並行するように、実在の魔法界とマグル界というものが設定されているので、あまり寓話的、暗喩的な部分はないのだが、仮に魔法生物やしもべ妖精、小鬼(ゴブリン)などが、ヨーロッパ以外の他の人種を示しているとすると、相当厄介なことになるようにも思われた。
舞台が、UKやアイルランド、フランス、アルバニア、東欧か北欧のどこか、エジプトなどに限定されていることもあり、グローバルな広がりのある物語になっていないのだが、それら限定された魔法界とその回りに広がる異世界については、お話が現実のUnited Kingdomに即していることは、アジア人やアメリカ人、アフリカ人などにはいつも少々読み足りない点ではなかったろうか?
追記: 原題の "Deathly Hallows"
deathly 死のような、致命的な、死に関係するという意味。
Hallow 名詞としては、普通には「聖職者」という意味。Halloween と同じ語源。Saint のことになる。
しかし、物語には、『死の聖職者』にあたる「人物」は登場せず、「死の秘宝」という「もの」が登場するので、日本語訳としてはこちらの方が適当なのかも知れない。
なお、ハリーの母のリリーと、その姉妹ペチュニア(ハリーの育ての親)の少女時代が描かれるが、どちらが年長かということはあまりはっきりしないが、どうやらこの第7巻ではペチュニアが姉で、妹の魔法の素質に嫉妬するというストーリーになっている。ただ、英語圏ではどうも姉妹の長幼については結構あいまいでも問題ないようで、原作者と日本語訳者との初期のやり取りでの確認(リリーが姉で、ペチュニアが妹という設定の確認)とは矛盾した結果になっているようだ。中国語などでは姉妹の別はあると思うのだが、どうなっているものだろうか?
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