浅田真央 第30回NHK杯優勝、鈴木明子2位、中野友加里3位
昨夜は、7:30からのNHKのLIVE放送で第30回NHK杯女子フィギュアスケートのフリースケーティングを注目して見た。
2番手で滑った中野友加里は、アダン作曲バレエ『ジゼル』の曲に乗り、衣装もフランス?の村娘風のデザインで、悲恋と幻想のバレエを題材に、微笑みを絶やさずにほぼすべての要素をミスなくすべり切って思わず拍手をしてしまった。今日の朝刊を読むと、右足首などに故障を抱え万全な体調ではなかったようだが、すばらしい集中力で、かつての村主章枝の全盛時代の集中し切った演技に匹敵するような出来だった。
3番手は、昨年辺りから復帰したという鈴木明子。やはり朝刊によると一時期摂食障害でスケートができなかったというが、前日のショートプログラムに続いて、ジャンプでわずかなミスはあったものの、こちらも気合の入った素晴らしい演技だった。この時点で、万全な出来と思われた中野友加里を抜いてトップに立つ。(この選手は、昨年の全日本で5位に入った選手で、グランプリ初出場だが、相当の実力者。ジュニア時代から表現力には定評があったと解説の荒川静香女史が語っていた。)中野は2位以内でないと、グランプリファイナルの出場が自動的に決まらないので、ピンチに立たされた。
4番手は、フィンランドのローラ・レピスト。顔立ちや髪、目が東洋系を思わせる。昨年は世界選手権で見たような記憶がある選手だが、そのときに比べてジャンプが格段に上達していたように見受けられた(と書いたが、この選手は昨年の世界選手権でショートの21位からフリーで7位を取り、全体で8位に躍進した選手だった)。フリーでは、そのジャンプがもう一つ精度を欠き、減点もされ、この時点で3位。中野の2位は維持され、鈴木の3位以内は確定した。
5番手は、アメリカのアシュレー・ワーグナー。ショートでは2位で、この選手の出来次第で、中野のグランプリ・ファイナル行きが左右される。17歳で伸び盛り。しかし、やはりジャンプの精度を欠き点数が伸びない。しかし、昨日のリードにより、レピストを抜き、この時点で3位。
そして、最後に登場したのが、浅田真央。女子では国際大会初の2回のトリプルアクセル(前向きで踏み切り3回転し、後ろ向きで降りる3回転半ジャンプ)を成功させるかどうかが注目された。もちろん、優勝か2位でのグランプリ・ファイナル(12月に韓国で開催)への出場も。昨夜の爽やかなコスチュームとはがらっとイメージを変え、黒を身にまとっているためさらに大人の女性の風格が漂う。曲は、ハチャトゥリアンの『仮面舞踏会』。曲想が大きく変化する曲を使う選手の多い中、4分間ほぼ同じリズムの曲で、単調になるかと思いきや、まずは切れと高さが十分ある完璧なトリプルアクセルを決めた。非常にスピードがある滑りなのだろうが、滑りが大きくなったせいか、スポーティさよりも、キム・ヨナのスポーツをやっているというよりも重力を感じさせないバレエを舞っているような優雅さに近づいたようで、ジャンプの時も昨年のような「よいしょ」という一瞬のためがあまり見られず、一瞬無重力になったようなスムーズなジャンプになっているようだ。エレメントのつなぎの部分もまったく弛緩することなく見ごたえがある。2回目のトリプルアクセルは次のダブルとのコンビネーションを狙ったせいか、判定ではわずかの回転不足で完全なトリプルアクセルとはみなされなかったが、不足は本当に微妙なもので、果敢な挑戦に鳥肌がたった。もう最初のトリプルアクセル成功から会場はシーンとするよりもざわついてしまったようで、そういう意味ではどうだったのか、最後のきめのポーズ前でバランスを崩すという御愛嬌の場面もあったが、高得点での優勝が決まった。
これで、惜しくも村主がグランプリファイナルへの上位6人から漏れてしまったが、浅田、安藤、中野の日本の3名がグランプリファイナル進出を決めた。ライヴァルは、韓国のキム・ヨナ、カナダのロシェット、そしてイタリアのコストナーとなる。昨年は、キム・ヨナは故障を抱えていたが、今回は故障も癒え、また母国開催ともなるので、浅田、キムの同年齢の華やかな対決は非常に注目される。
ISUの公式スコアページはここで。
なお、ショートプログラムで気になったカメラワークの違和感は、昨夜はそれを意識しながら見ていたが、いたって「普通」の出来で、競技を見る邪魔にはならなかった。勿論生放送でそのような「普通」を維持するには相当のプロフェッショナル性が必要ということは理解しつつ、それでも、最近の選手の技術の向上もあるのだろうが、複雑なステップの場面などでは、迷うような動きになる場合があり、その点各選手の動きの事前研究が更に求められるようにも感じた。また、スパイラルシークエンスの場面で、中野選手の笑顔をアップにするのもいいが、全体を見せながらアップにするというような工夫も必要ではないかと感じた。
追記:男子は、今日の5時からの放送があり、織田信成選手が見事に優勝を決めた。本人も意外と思うほどのフリーでの高得点だったが、果敢に4回転に挑戦し、着地後少しバランスを崩したが、回転は足りていたので、そのあたりが評価されたのだろう。また、後半にも難しいジャンプを入れていた。その前に滑ったアメリカの選手ジョニー・ワイアー(Johnny WEIR)も観客アピールは高かったが、後半にジャンプが少ないなどの点で、得点が素人目よりも伸びなかったようだった。
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