フィギュアスケート GF2008 韓国高陽でのエキシビションで見えた感情
日曜日の夜は、大河ドラマ『篤姫』の最終回とグランプリファイナルのエキシビションが重なってしまったので、ドラマを優先させてエキシビションはビデオ録画しておいた。
大河ドラマの最終回はなかなか難しいと思う。昨年の『風林火山』は、膨大に撮った川中島の戦いの映像がもったいなかったということで本編が一回分伸びたのだが、それまでのそれなりの緊張感が相当間延びした感じになってしまい、延長は失敗したように思った。今回の『篤姫』は、江戸城の無血開城までの盛り上がりに比して、最後の2回分は、小説ならばエピローグとしてそれなりに趣があるのだろうが、このような映像作品では、篤姫晩年のエピソードをクロノロジカルに積み重ねるだけの淡々とした演出は、回想シーンもあまり入らず、少し説明調に過ぎて物足りないものがあった。来年は、『天地人』という題名の直江兼続(なおえかねつぐ)を主人公とした戦国時代ものになる。越後、会津、米沢が主要舞台となり、また秀吉、三成、家康などの大物も数多く登場する。これまで脇役としては知る人ぞ知る直江兼続で、原作の小説は未読だが、童門冬二の小説『直江兼続—北の王国』で知り、藤沢周平の『密謀』でも、司馬遼太郎の『関ヶ原』でも興味深く描かれた稀代の大補佐役の生涯は楽しみではある。ただ、『篤姫』並みの人気(視聴率)はどうだろうか?
さて、主題のエキシビションの方だが、男女のシングルの上位とペア、アイスダンスの上位が競技では見られない華麗な演技を披露する娯楽性の強いもので、競技よりもこちらを楽しみにするファンも多いようだ。テレビ番組の順番なので、実際の順序がどうだったかは定かではないが、2位の小塚が男子の最初の方で滑り(本家ドリフターズの"ラストダンスは私に")、そしてトリで浅田真央が『タンゴ』(誰の曲?)で素晴らしい演技を見せてくれた。その前がキム・ヨナで『ゴールド』という曲。こちらの出来も素晴らしく、会場からはものすごい歓声と拍手が聞こえていたが、浅田の演技では、見事なジャンプやスピン、ステップにもほとんど喝采らしい喝采が聞こえて来なかったのには驚いた。ブーイングはさすがになかったが、ジャンプで少しバランスを崩したときに口笛が聞こえたようだ(家族の談)。
会場の多くを占める韓国の人たちの気持ちを分からないではない。『ゴールド』で、キム・ヨナの金の舞を見たくてこのエキシビションのチケットを入手した人が多いのだろうとは思う。しかし、シーンとした少し異様な雰囲気の中で、誇り高く精一杯の女王としての演技をする浅田の姿勢に、逆に感動させられた。金メダリストに許されたアンコールでは、『仮面舞踏会』のステップシークエンスでのフィナーレを滑ったが、ここでも大喝采はなかった。
『国民の妹』を負かした日本のライヴァルに対して拍手喝采をすることをストレートに拒否する人もいるのだろうし、また紳士淑女的に拍手をしようとしても周囲の雰囲気のプレッシャーで結構躊躇いがあるのかも知れない、などとも思った。これが、まったく逆の立場で、日本開催でキム・ヨナが逆転で優勝し、浅田や安藤、中野などが後塵を拝した場合には、日本の観衆の反応はどうだろうかとも想像したが、恐らく優勝したキムにも惜しみない拍手喝采を送るのではなかろうか? なかなか考えさせられるシーンだった。
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