マリアン・アンダーソン 黒人霊歌集
アメリカの生んだアルト(コントラルト)歌手、マリアン・アンダーソンの名前を初めて知ったのは、高校の英語のリーダー(Reader)のText所収のアンダーソンに関する小伝だったと思う。もう記憶はあいまいになっているが、確かトスカニーニの名前も登場した。Contraltoという女声では最も低い音域からソプラノ並みの高い声域まで数オクターブに渡るムラのない美声が特徴だったというようなことが高校生向けの英語で書かれていたような気がする。
昨夜、12月になったというので、クリスマスに縁のあるCDを棚から居間に持って来て少し聴いたのだが、それをきっかけにこども達に『黒人霊歌』のことを少し話した。
『黒人霊歌』は、コーラス団体に入って歌っているときに、"Swing low, sweet chariot"や"Deep river" ,"Sometimes I feel like a motherless child" ,"Nobody knows the trouble I see" , "Joshua Fit The Battle Of Jericho" など、定期演奏会で歌ったことがある(少しうろ覚えだが)。そのときには、ロバート・ショー合唱団ロジェー・ワーグナー合唱団(Roger Wagner Chorale) の『黒人霊歌集』のCD(確かEMIのSeraphimレーベルの廉価盤)を持っていて、合唱団の仲間と回し聴きをして楽しんだものだった。誰かに貸したまま、そのまま行方不明になっている。今では廃盤のセラフィム盤(現在では全く同じものではないが黒人霊歌集の国内盤が入手可能)は10曲以上収録された結構素晴らしい録音のもので、その当時乗っていたホンダシビックフェリオに取り付けたアルパインのカーステレオでよく聴いたりしたが、合唱団の団長もいい録音だと感激してくれたものだった。(同じ Rで始まるUSAの合唱指揮者なので、ついつい間違えてしまう。Robert Shaw の方は、トスカニーニの第九での合唱指揮者も務めており、後にオーケストラも指揮した人だった。)
さて、このマリアン・アンダーソンの Spirituals (以前の言い方では Negro Spirituals と差別的なニュアンスのある表現をしたものだった。先に取り上げたドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』も今ではほとんど忘れられているがかつてはなんと"Nigger"という今では考えられないようなニックネームを付けられていた時代もあった。)だが、マリアン・アンダーソンを本格的に聴くのは、このCDが初めて。1936年から1952年に掛けてのピアノ伴奏による独唱曲として歌われているもので、もちろんすべてモノーラルだが、当時のRCAの技術の高さか、それともリマスタリングが成功したのか、1950年代の録音ではほとんどスクラッチノイズもなく、深深としたマリアン・アンダーソンの歌唱をストレスなく味わうことができる。
なお、このマリアン・アンダーソンの甥にあたるのが、日本でも活躍したアメリカの黒人指揮者 ジェームズ・デプリーストであるということは、このCDで初めて知った。のだめファンには、あのルー・マルレ・オーケストラの音楽監督で、シュトレーゼマンの唯一の指揮者の親友であり、唯一の実名登場人物で、作中では「デプさん」と呼ばれている。
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