モーツァルトの254回目の誕生日
Mozart Piano Sotanas
Nr.11 A dur K.331 16:23/7:12/3:35
Nr. 7 C dur K.309 9:16/7:43/6:49
Claudio Arrau (1903.2.6-1991.6.9)
〔1985年3月24-29日 スイス、ラ・ショー・ド・フォン〕
1756年1月27日を1回目の誕生日とすると、今年2009年の今日は、254回目の誕生日となる。満で数えると253歳ということだが。
この録音の時には、ピアニスト アラウは、何と満82歳。
もともと無骨なタッチの人だが、最初聴いたときには、いくら名ピアニストの録音だとは言え、リズム的な重さやタッチのムラなど少したどたどし過ぎるのではないかと思ったほど。
玉を転がすような粒の揃ったタッチ、滑らかな技術、誇張のない解釈とダイナミックスなど、現代ピアノでのモーツァルト演奏は規範のようなものがあるけれど、その意味ではこのアラウの演奏はお世辞にも規範どおりとは言えない。特に、聴きなれたK.331では、アラやムラが最初のうちは確かに気になる。しかし不思議なもので、天衣無縫の境地とでも言うのだろうか、本能的に奏でる幼子の演奏とまでは行かないが、聴いているうちにそのようなムラやアラは気にならなくなり、むしろ不思議な魅力に捉われてしまっている。
K.331のフレージングは、昔風のスラーによるものではなく、新全集などで見られる折り目正しい短めのそれを採用しているようで、その意味ではこのピアニスト歴70年以上という超ベテランにも関らず、昔取った杵柄に寄りかからずにいたということが窺がわれるようだ。
K.309のハ長調のソナタはそれほど馴染みのある曲ではないが、アラウの演奏は比較的堂々と、「ドイツ風」というキャッチフレーズを想起させるようなところもある。
ルドルフ・ゼルキン(1903.3.28-1991.5.8)、ウラジーミル・ホロヴィッツ(1903.10.1-1989.11.5)も、アラウと同じ年の生まれで同様に晩年までピアニストとして活躍し、少し先輩にあたるアルトゥール・ルービンシュタイン(1887.1.28 - 1982.12.20)ともども、老熟の味わいを味あわせてくれたピアニストだった。
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コメント
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おはようございます。
モーツァルトのピアノソナタは大好きでよく聴いています。
なかでもアラウの全集は録音も良いこともあって頻繁に取り出します。
初期の200番代の作品にはちょっとついていけないところもありますがK284以降はアラウの語るような演奏にいつしか引き込まれてしまいます。
300番代も好きですが後期のK570とK576は私にとって最高の音楽の一つです。
投稿: 天ぬき | 2009年1月28日 (水) 10:16
天ぬきさん、コメントありがとうございます。
私はたまたまこの1枚を入手したのですが、アラウは全集を録音しているんですね。この演奏の傾向ですと、初期の溌剌とした楽想は確かにつらそうですが、後期の作品の演奏はおっしゃるとおり興味深いものがありますね。機会があれば是非聴いてみたいと思います。
また、アラウのこの頃のフィリップス録音はどれもピアノの音色がいいですね。ベートーヴェンのディアベリ変奏曲はアラウの録音が入門なのですが、これもまた素晴らしい音です。
投稿: 望 岳人 | 2009年1月28日 (水) 20:20