島田雅彦の新聞連載小説『徒然王子』完
この作家は、現代日本の天皇家への関心が強く、またタブーを敢えて意識しないのか、現実の天皇家の人々をモデルにした小説をこれまでにも発表してきた。(無限カノン三部作)
女性天皇など、天皇家の将来のお世継ぎ問題がマスコミ、世間をにぎわし、秋篠宮家に待望の男宮の誕生があって、それらの問題もいつの間にか先送りされたかのような時期に、『徒然王子』の新聞連載はスタートしたように自分の記憶としてはある。
「王室」のお世継ぎであるテツヒト王子が、「徒然王子」の主人公。コレミツが従者だが、これは源氏物語の光の君の従者、惟光(これみつ)から取ったことは明らか。第一部は、この王子の現世での妃探しの遍歴と、過去(あの世)への旅立ちを描いていた。
今日少しフィナーレの重みが物足りない感じで完結した第二部は、テツヒト王子の前世、つまり輪廻転生を辿る旅であり、それがそのままニホンの歴史を順にたどっていく旅という構成になっていた。印象に残っているのが、始皇帝の不老長寿の妙薬探しを命ぜられた徐福の蓬莱への旅に同行した中国人としての前世であり、彼がニホンにたどり着き、ニホンの弥生時代人?の娘と愛し合うという章、また那須与一の弟として九州に逃れた平家の落人を追跡し平家の姫君と結ばれる章。最後の江戸時代の大阪からの東海道道中は少し冗長だったが、この章の最後の吉原の花魁とのエピソードはなかなか読ませるものがあった。
そして、現世に戻ろうとしたところ、実は・・・という設定が、少し場当たり的であり、意外でもあった。全体としては、コメディータッチだったが、内容的には至極シリアスな内容だったと思い、毎朝楽しみにしていたが、最後は少々しりすぼみだったかも知れない。
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