佐藤優(まさる)『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮文庫)
最近、J-CASTニュースというサイトを時々読んでいる。
テレビのワイドショーや新聞や電車の中吊りの雑誌の広告見出しにより世論が形成されているという時代でもあるので、その解説記事として読むと、なかなかメジャーなマスメディアが取り上げないような下世話な話題や裏話、与太話が興味深い。
なかで、傑作だと思ったのが、「中川元大臣「ウソ」暴いたのは 「質問主意書の鬼」鈴木宗男だった」というもの。あの田中眞紀子衆議院議員と鈴木宗男衆議院議員が相討ちのようにして外務省・外交の表舞台から姿を消し、その後、醜聞まみれにされ、マスコミと世論に叩かれながら衆議員に再当選した鈴木宗男という人物に驚きをもっていたことはもあり、先日もちらっとテレビに写ったのを見て、「まだ」何かやっているようだという感想をもっていたのだが、この記事を読んで精力的な政治活動のすさまじさを思い知らされた。
そんな矢先、ブックオフで面白そうな本はないかと探していたら、その鈴木宗男議員と一緒に逮捕された怪しげな「外務省」のラスプーチンこと佐藤優のノンフィクション『国家の罠』という本が目に留まったので、先般からの興味の導きもあり購入して読み始めた。
まだ係争中の事件の被疑者でもあるので、そちら側からの一方的な情報ではあるので、と当然割り引いて評価すべきものなのだが、読み進めるにつれて、この一連の事件のただ事でなさというものが伝わってきた。
小泉内閣当初の田中外務大臣の就任とそれに続く一連の外務省関係のスキャンダルについては、マスコミ報道というよりも、テレビのワイドショーや新聞や電車の中吊りの雑誌の広告見出しの影響で、あの少し関西の漫才師を想像させるような鈴木氏の風貌や語り口の軽さもあり、私も勿論その一員なのだが、彼およびそれにつながるとされた佐藤氏などを相当軽くあしらったような記憶がある。
今話題となっている検察による「国策捜査」について、検事とのやりとりが非常に詳しく書かれており、また容疑者として500日以上も東京拘置所(刑務所ではない)に拘留された様子がなまなましく書かれている。
自己弁護の書でもあるが、当時の日露平和条約締結に向け、ロシアと北方領土での駆け引き、外務省の情報戦略の第一線で、エリツィン後はプーチンだという情報を入手したくだりなどスパイ小説よりも事実に即しているだけあり、非常に引き込まれるものがある。
著者は、まだこの本に書かれた訴追理由による裁判の被告ではあるようだが、活発に論壇活動も行っているようだが、日露関係については既に過去の人となってしまっているのだろうか。先日の3.5島論などが飛び出すようではこの先も思いやられる。
ところで、J-CASTには、民主党が政権をとると困るのが外務省で、鈴木宗男が副大臣として乗り込んで来て、大掛かりな報復人事や機密費問題などを洗いざらい白日の下にさらすかも知れないというような記事も載っていた。政治の世界は闇が濃いようだ。
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