村上春樹『東京奇譚集』(新潮社 2005年9月18日発行)と新作
4月中旬だったが、何で人気作家の比較的最近発行されたハードカバーの初版本がこんなに廉いのか分からないが、とにかく最低価格で売っていたのを求めてきた。
ここ数日は、この作家の新作の上下二冊の小説が記録的な売れ方をしているというニュースが喧しいほどだ。「1Q84」という題名らしい。うっかり「IQ84」の誤植かと思ってしまうような題名で、少し驚く。
2009/06/06 追記:まだ入手もできていない「1Q84」だが、ネット情報では、題名的にはジョージ・オーウェルの「1984」のモジリらしいということが言われている。今は当たり前のように使っているネットのアクセス解析だが、実際に自分のcocologでその内容の詳細さに触れたときに、まさにこれは「1984」の世界ではないかと感じたことを書いたことがあったのを思い出した。「ココログ アクセス解析の導入で考えたこと」2006年8月 3日 (木)
1Q84というのはまた、「仕事の上では、1st Quarter,1984 1984年の第1四半期のことだよな」ともおもったりもした。とにかく入手困難なほどの売れ行きだとのこと。新型インフルエンザ予防のマスクもとうとう某ネット企業による買占めなどの噂がたったほどのブームだったが、意外にも国内感染が拡大しないことから急に売れ行きが鈍っているようで「ブーム」はあっという間に過ぎてしまったようだ。「1Q84」は果たして一時的なブームで終わるのか、それとも読み継がれるものになるのか?少々気になる噂だが、どうも作者と出版社が事前に「情報統制」を行って読者の飢餓感を煽ったらしいというようなことも伝わっているので、そのあたりが少し胡散臭さを感じてしまう。2009/06/06追記ここまで。
RSSリーダーに登録させてもらっている「アマオケホルン吹きの音盤中毒日記」の記事には、「村上春樹とヤナーチェク」という題名があったので、一体何事かと思い読ませてもらったところ、ヤナーチェクの『シンフォニエッタ』がどうやらジョージ・セル指揮のクリーヴランド管弦楽団の演奏という名前入りで登場するらしい。 先日読んだ『意味がなければスイングはない』や、『海辺のカフカ』でもこの作家の音楽への強い思い入れが表現されていたが、新作でのヤナーチェクの音楽への言及はどういうものなのか興味が沸く。
さて、『東京奇譚集』だが、比較的難解な設定の登場人物設定や奇想天外というか常軌を逸した展開についていけずにあまり楽しめていない村上春樹の作品にしては、短編集ということもあり、それほど混乱することなく何作かの短編を楽しむことができた。『偶然の旅人』『ハナレイ・ベイ』『どこであれそれが見つかりそうな場所で』『日々移動する腎臓のかたちをした石』『品川猿』の五編の短編。
奇妙なようだが、本当にあった話という体験談であるという自己規定的な文章が第一作の冒頭に書かれている。普通の前書きというわけではない。その意味では、短編集というよりも、一種のテーマをもった連作集と呼んだ方がいいのかも知れない。
村上春樹は、世界的に多くの読者を持つ現代日本きっての作家であり、先日の「エルサレム賞」でのイスラエル政権への痛烈な講演は、勇気をもった文学者として高く評価された。 ただ、彼の作品をすべて読んだわけでもなく、好みの作家かと聞かれるとそうとはとても言えないが、関心を持っているという程度の小説家なので、えらそうなことは言えないが、彼の音楽に関するエッセイはとても面白いので、先の『意味がなければ・・・』の続編のようなものがあれば読んでみたい。(『意味がなければ・・・』では、ジョージ・セルとルドルフ・ゼルキンのヴィーンでの少年の頃の修業時代のことに触れているくらいなので、ジョージ・セルが好みなのか、『1Q84』を読んでみなければ分からないが。)
p.s.
ところで、今日はやけにこのブログへのアクセスが多いので、アクセス解析で調べてみたところ、『ミニ氷河期」というキーワードで検索して、2006年ごろに書いた記事にアクセスしてくださる方が多いようだ。
2006年2月 7日 (火) ミニ氷河期(小氷河期)が到来するのだろうか?
最近になって太陽活動が停滞期になっているということが言われ始めたが、この2006年当時、このロシアの天文学者は既に予想していたということになるのかも知れない。
科学も当たるも八卦あたらぬも八卦的な部分が多かれ少なかれあるので、この停滞期がいつまた活発期に遷るかどうかは誰にも分からない。ただ、過去の観測から読み取れる太陽活動のリズムの低迷期がちょうど今頃だとしてもそのサイクルに矛盾しなということだけで、これこそ人為の及ぶところではない。
達観しているようだが、実はとても懸念しているので、以前からこのようなことに関心があるというだけなのだが。
音楽評論家の黒田恭一氏が逝去されたという。音楽雑誌を読み始め、FM放送を聴き始めてから存じ上げていたが、70歳を少し越したばかりで亡くなられたという。非常にソフトで、少しひらがなが多すぎるほどの評論を書く方で、ソフトながらぶれない芯も持っていたようで、当時アンチカラヤンが多かった評論界の中では珍しくカラヤンへの賛辞を隠さなかったのが、強く印象に残っている。御冥福を祈りたい。
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コメント
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「東京奇譚集」面白かったですね。
表紙の猿の絵もよろしく{゚ω゚}エノザル
ゴールデンターキンも好きな動物です。
投稿: eno | 2009年6月15日 (月) 20:13
enoさん、今晩は。初めまして。コメントありがとうございます。
『東京奇譚集』は村上春樹的な難解さが薄くて比較的面白く読めました。
ところで、「絵ノローグ」拝見しましたが、表紙の絵、クモザルですね。早速、Google の画像検索で、「クモザル 日本画」を検索したところ、A Shinagawa Monkey がヒットしました。「品川猿」でしたか。
http://enokitoshi.blog88.fc2.com/
驚きました。
投稿: 望 岳人 | 2009年6月15日 (月) 22:41