上橋菜穂子『獣の奏者』第3巻、第4巻
現在、アニメーション化されて今週の土曜日に最終回を迎える『獣の奏者』(第1巻、第2巻)の続編が出るという噂はネットで知っていたが、数ヶ月前の新聞の一面広告で宣伝されたのには驚かされた。
もう一月ほど前になるが、妻が図書館に借り出しの予約を入れていたのだが、ようやく借りられる順番が回ってきて、第1巻、第2巻からファンになった長男と競うようにして読み終えた。次男はアニメは楽しんでいるので、家族から読め読めと奨められてもまだ読もうとしないのは不思議だ。
壮大な構想という点では、やはりアニメーション化された守り人シリーズの方が優れているのだろうが、獣の奏者は、闘蛇と王獣という魅力的な想像上の動物が物語の重要な部分を占めるので、その点が非常に魅力がある。人間の兵器として使われるそれらの獣の存在は、現代の核兵器、生物兵器などのアナロジーで、かつてその兵器である獣を使った戦争によって一国が壊滅するほどの悲劇が起こったという前史が、物語の基礎を形づくっている。
上橋菜穂子は、私とほぼ同年代のオーストラリアのアボリジニに造詣の深い文化人類学者であるが、その知識や経験を生かしたファンタジーは、文化人類学の影響からアーシュラ・ル=グィンに通じるものがあるが、ユング心理学的な深遠さは持ってはいない。舞台が架空の東洋の古代、中世あたりに設けられることが多いようで、その面からもアジア的なテイストが感じられる。アニメーションにもなった『十二国記』(小説は未読)も連想されるが、膨大な筆量は凄いと思う。
第1、2巻は、作者自身が言うように、完成した物語であるが、その大団円は、それまでの詳細な叙述に比べてあっさりとしたものだった。それが余韻を生んではいたのだが、やはりその謎、その先を望んでしまっていたので、第1、2巻で満足した読者でも、第3、4巻には満足することだろうと思う。
なお、アニメーションは、原作の第1,2巻をある程度翻案しているが、これは作者自身もこれに関っており、その取り組みが第3、4巻を生む下地にもなったとのことである。
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