年末に世界史に親しむ
BOOKOFFで中央公論社の『世界の歴史』のシリーズを今年は数冊超廉価で購入できたのだが、積読が続きなかなか読めなかった。
今日から年末の休みに入り、先週ひいた軽い風邪がまた少しぶり返し、昨日の仕事納めの日も少しだるく、帰宅後体温を測ったところ37度ちょっとあったので、今日は静養させてもらった。子ども達は短い冬休みをゆっくり過ごすために、昨日今日と宿題に取り組み今日の夜までにはほとんど終わらせたようだ。それで私も布団に入ってうつらうつらしながらだが、アメリカの独立戦争(これを著者は革命と呼ぶ)とフランス革命を扱った第21巻『アメリカとフランスの革命』(五十嵐武士、福井憲彦著)をようやく読み終えた。最初にフランス革命の方を読み、その後アメリカ革命を読んだのだが、フランス革命はツヴァイクの『マリー・アントワネット』や、ディケンズの『ニ都物語』、アナトール・フランスの『神々は渇く』、コミック『ベルサイユのバラ』などの登場人物に焦点を当てた劇的な筆致とは異なり、淡々と複雑な事実を分かりやすくクロノジカルに積み重ねていくという書き方で、最後はナポレオンの敗北で終わるのだが、フランス革命が短い突発的な事件ではなく、現代政治にも通じるようなイライラするような紆余曲折や左右のブレの続く政治過程だったということが改めて痛感され、歴史の歯車は局面局面での無数の選択が形作っているのがよく分かった。
アメリカ独立戦争については、フランス革命ほどの予備知識はなく、通史としてはこの本が初めて読む内容が多かった。まず余談だが、アメリカの自動車の車名や船名や、地名になっているのが、ネイティブアメリカン(いわゆるインディアン)の部族名が多いのが今回改めて気が付いた。マサチューセッツもそうだし、ポンティアックとかチェロキーとか、ヨーロッパからの植民者がネイティブアメリカンを征服した歴史を考えると、結構複雑なものを感じざるを得なかった。
政治過程という面では、高校生レベルのアメリカ史の知識では、ボストン茶会事件、東部13州の独立戦争、合衆国憲法の制定とすんなりと歴史が動いたような印象しかないのだが、詳述されたアメリカへの入植から憲法制定までの過程は、フランス革命で感じたよりもさらに局面局面の複雑な選択の結果で、決して敷かれたレールの上を進むように歴史の歯車が回ったのではなく、賛否を取る投票でもギリギリの過半数で現代まで続く合衆国が成立したかしなかったかの岐路があったり、特にあれだけ広い領土での共和制の実現というのが世界史的に見ても初めての実験であり(通常は王政や帝政による)、近代憲法史上も特筆すべき合衆国憲法の成立が、やはり紆余曲折の後に制定されたり、大英帝国からの課税に反発が独立のきっかけになったというのに合衆国が成立した後の財政的な危機で国民に課税をせざるを得なくなったという状況など、まるで今の政治過程を見ているような感を持った。
時代は変われど、人間は変わらない。
次に余勢を駆って、第9巻の『大モンゴルの時代』(杉山正明、北川誠一著)を読み始めたが、これが予想に反して非常に興味深い「つかみ」(韓国木浦沖で発見された中国元時代のものと思われる難破船と中国の磁器の「染付」)から入っているのに加えて、モンゴル帝国が残したペルシア語の歴史書『集史』とそのビジュアル版とも言える『五族譜』というものの紹介が非常に面白いものだった。(Wikipedia には「集史」の項があった。)
モンゴル帝国の余波は、現在も遺伝学的に「酒が飲める、飲めない」という体質として伝わっている(コーカソイド人種であるハンガリー人やインド人にも、若干ではありますがD型遺伝子を持った人がいるというのは、歴史と照らし合せて考えると、かつてモンゴル帝国の支配がそこまで及んでいた証でもあるわけで、とても興味が湧いてきます。)ようだ。年末年始に酒を飲む機会が増えるが、そのことに思いを馳せるのも面白いかも知れない。
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