高校生の世界史未履修問題と「阿片戦争」と経済評論家、世界の歴史19「中華帝国の危機」
下記の下書きは、もう3年以上も前のものなのだが、最近読み始めた世界の歴史19の『中華帝国の危機』の付録の鼎談に面白いことが書かれていたので、少しは関係があると思い、アップしてみることにした。
松本健一という作家・評論家と、並木頼寿、井上裕正というこの歴史の著者が、鼎談をしているのだが、松本氏の香港での1996年の講演後に、香港の人が「香港人はアヘン戦争のことを知らない」と伝えに来たという話題が出されており、それでこの古い下書きを思い出した次第。
これは、英国支配下の香港では、英国のかつての悪行である「アヘン戦争」を香港の人々に教えないように歴史教科書を編集した結果らしい。
やはり歴史教科書というものは、特に自ら歴史を学ぼうという気持ちのない普通の人々には相当強い影響力があるものだと思った。
下記に書いた経済評論家の場合はどうだったのだろうか?
-----------2006年11月2日の下書き-------------
日々の展開が速いので、マスメディア的にはすでに旧聞に属することになっているが、日経BPネット 立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」第89回 東大生にも蔓延!履修漏れ問題 「ゆとり教育」が国を滅ぼす に昨今の主に世界史を中心として未履修問題が、いつもの立花隆らしく大上段に振りかぶり憂国の言辞で締めるというパターンながらまとめられている。
これを読みながら、以前たまたま民放テレビのクイズ番組で目にした経済評論家の世界史知識の無知を思い出した。これはその後ネット上でも相当に話題になったようだが、確か「アヘン戦争が清国とどこの国との戦争だったでしょうか」というような設問の答えを、東大卒のその経済評論家が回答できなかった場面だった。
WIKIPEDIAでは、経歴が、都立高校卒業、東大理二入学、東大経済学部卒業となっている。浪人、留年もせずに、また理科系から文科系への転籍のも関わらずストレートで学業を完了した「優秀な」学生だったようだ。(一部で帰国子女だったという話も聞いたことがある。そうなると日本では中学校の社会科でアヘン戦争に触れることもあったと記憶するので、それが遠因とも考えられないではない。)当時の高校の世界史は選択制だったし、いわゆる大学入学時は理科系なのでその部分について無知なのは一般人としてなら許されるだろうが、「アヘン戦争」の世界史的位置、その後の東アジア、特に日本に与えた政治的・「経済的」影響の重大性を見たときに、経済評論家として知りませんでは済まされないだろうと思う。もっともあまりにも初歩的な問題で裏があるのではと深読みしすぎて答えられなかったという、逆の深読み解釈もできないではないが。
いずれにしても、15・16世紀に始まった欧米列強の世界的な膨張・侵略の象徴的な事件であるアヘン戦争について、彼はどう考えているのか。経済が人間の営みである限り、歴史的な事件の記憶の連鎖のようなものも非常に重大で、それがために、現在でも世界各地で、恩讐の連鎖のような事件も続いている。
数学的な計量経済学では、人文的なそのような知識はあまり必要ないのかも知れないが、最低限の知識という意味で、日本史、世界史の知識は必要なのではあるまいか?
高校の履修漏れについては、大学受験体制とゆとり教育に原因が求められるので、高校や教育委員会だけを責めても仕方がない。まして、高校生には責任がない。
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