文春新書の「クラシックCDの名盤」演奏家篇 (宇野、中野、福島共著)の改訂版 流し読み
文春新書の「クラシックCDの名盤」演奏家篇 (宇野、中野、福島共著)の改訂版(2009年11月発行だと思った)が本屋の棚に並んでいたので、手に取って流し読みをしてみた。
初版では、宇野氏と彼の影響下にあった福島氏の主導権ではないかと憶測されるのだが、論評対象のリストにセルやクリュイタンスの名前がなかったが、今回はどういう意見の修正があったものか掲載されていた。
福島氏が宇野氏の影響を脱したのか、セルのハイドンの交響曲集を初めて聴いてセルを見直したなどと評論家に似合わぬ正直なことを書いていて、セルについて東京ライブやドヴォルザークの熱い演奏(CBS)を誉めていて驚いた。評論家としての個性を売りにするためには、エキセントリックな物言いがときには必要だろうが、プロならば自分の気に入らない演奏家の録音やコンサートにも目を(耳を)配る方がよいと思う。
宇野氏は相変わらずセルを否定し続けたいようで、1970年の来日公演の「英雄」(吉田秀和氏が絶賛したもの)を完全否定し、中野氏が推奨している協奏曲のCDなどは見つからない(持っていないか、見つけるつもりがないのでは?)とまで書いている。ここまで固執すれば立派なものだ。唯一、ヴィーンフィルとのエグモントを推薦盤にしていた。
また、クリュイタンスについても宇野氏は語る言葉がないようなことを言っていたらしいが、福島氏は、これも古くから知られていたはずのクリュイタンスのベートーヴェン全集を、改めて最も素晴らしい全集の一つだろうと再評価していた。
これまで、福島氏は、むやみと入手しにくい音盤を推薦するきらいや衒いがあったが、ようやく肩の力が抜けて正直にものが言えるようになったのだろうか?
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U氏ですか。まず手に取ることはありません。ある演奏家が、どういうことを目指しているかを理解し伝えることも、音楽批評の大事な役割だと思います。AとBと二つあるとき、Bを無視し貶めることが、Aの価値を示すことにはならないと思いますね。数学じゃないのですから。
Aはこういうことを目指している。ところがBは別のほうを目指している。それは、こういう意味があるからだ、というような説明を知りたいものです。好み、好き好きは、人それぞれだと思いますので。
投稿: narkejp | 2010年1月27日 (水) 22:18
narkejpさん、今晩は。コメントありがとうございます。
初版の方の「クラシックCDの名盤 演奏家篇」(2000年発行)をみたところ、宇野氏も今年で80歳になるそうです。宇野氏の暴論には辟易とすることもありますが、結構面白がっている自分もおります。
とはいえ、これまでのところ、率直に個人的な偏愛を表現することしかしないのがスタイルのようで、その偏愛のとばっちりでばっさりと切り捨てられた演奏家のファンにとっては面白くないのですが、その切り捨て方がもっと上品であればいいのですが・・・。
宇野氏を「他山の石」呼ばわりしては失礼ですが、自分自身も安易に否定的な評価や切捨てをしがちなので(同属嫌悪かも知れません)、他山の石として、自戒が必要です。
投稿: 望 岳人 | 2010年1月27日 (水) 23:39