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2010年3月23日 (火)

リヒャルト・シュトラウス 交響詩『ツァラトゥストラはこう語った』

Richard Strauss : Also Sprach Zarathustra, Op.30

スタンリー・キューブリック監督作品の『2001年宇宙の旅』 "2001: A Space Odyssey" (1968年作品)で冒頭の導入部が使われたことで一躍有名になった音楽。

ヴァーグナーに傾倒し、後に訣別した哲学者フリートリヒ・ニーチェの哲学小説(副題に Ein Buch für Alle und Keinen , A Book for All and None 全ての人のための本、且つ誰のためでもない本)にインスピレーションを受けた音楽とされる。リヒャルト・シュトラウスの音楽万能主義とでも言うべき自負心が作り上げた作品といえようか。

竹山道雄訳の『ツァラトストラかく語りき』(新潮文庫)が自宅にあり、高校生時代に冒頭を少し読んで見たことがある程度で通読はできていないので偉そうなことは言えないのだが、Übermensch(Overman, Overhuman, Superman, Superhuman 「超人」)、いわゆるキリスト教を超克した超人主義の哲学を唱えたもので、音楽がその哲学を語っているというよりも、音楽万能主義を主張していたような作曲家、リヒャルト・シュトラウスの存在自体が超人主義の象徴なのかも知れない。

Rstrauss_karajan_bpo
カラヤン/ベルリン・フィル〔1973〕 Total 35:01

1. Einleitung 導入部(日の出) 1:49
2. Von den Hinterweltlern 背後の世界の人々について 3:28/5:17(累計)
3. Von der großen sehnsucht 大きな望みについて 2:07/7:24
4. Von der Freuden und Leidenschaften 喜びと情熱について 2:05/9:29
5. Das Grablied 墓の歌 2:42/12:11
6. Von der Wissenschaft 科学について 4:32/16:43
7. Der Genesende 回復期の患者 5:09/21:52
8. Das Tanzlied 踊りの歌 7:59/29:51
9. Nachtwandlerlied 夜を彷徨う人の歌 5:10/35:01

ジュラシックページによると映画「2001年宇宙の旅」で使われたのは、カラヤン/ヴィーンフィルの1959年のデッカ録音 だったということだが、これは黄金の1970年代の豪華なカラヤン/ベルリンフィルによるもの。飛ぶ鳥を落とす勢いのカラヤンの「超人」的な音楽を聴くことができる。特に7部の「回復期の患者(病より癒えてゆく者)」のフーガ的な部分の重厚さは聞き応えがある。


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小澤征爾/ボストン交響楽団〔1981〕 33:43

カラヤンの弟子でもある小澤征爾がボストン響で、『英雄の生涯』とたて続けに録音したリヒャルト・シュトラウスもの。この日本盤をCD収集初期に購入したが、友人にプレゼントしたので、しばらく聞く機会がなかったが、最近ブックオフで輸入盤を見つけて購入。

冒頭の格好よさはこれが一番かも知れない。

<<全体的には丁寧な演奏で、カラヤンに比べると線が細く、ダイナミズムが少し物足りない感じがする。あざといまでの永劫回帰の「超人」よりも、東洋風の輪廻転生からの「解脱」を感じさせる。>> と記憶に残った印象を初め書いたのだが、改めて聴き直してみると、相当意志的な力が感じられる演奏、録音だった。第4部の迫力など大したものだ。

しかし、カラヤンで迫力があった第7部は、指揮者もオケも少し息切れ気味なところがある。また、第8部などは細部が磨き上げられていない。ライヴ録音的な未整理な印象もある。ボストン響の名コンサート・マスターとして知られたシルバースタインのソロもベルリンのシュヴァルベやヴィーンのヘッツェルに比べると音色や洗練の度合い的に辛いものもある。第7部、第8部の中間の辺りの出来のレベルや線の細さや散漫な印象につながったのかも知れない。

録音は、分解能がよく、低域から高域までバランスよく録られている。ほぼ一発録りだと思うが、ベルリン・フィル、ヴィーン・フィルに比べて、細部までよく聞こえることもあり、ボストン響のところどころの弱さが少し覗くような気もする。

なお、元々LP発売だが、CDとしてはトラック分けしてもらいたかった。

 

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プレヴィン/ヴィーンフィル〔1987〕 34:57

テラークのディジタル録音による珍しいヴィーン・フィルの録音。

プレヴィンは、比較的品のよい演奏で、無遠慮なまでに「超人」思想を謳いあげてはいない。それほど哲学小説の内容に捉われることはないだろうが、善悪を超越したほどのキッパリとしたメリハリが欲しいような気がした。

ただ、8部の「踊りの歌」でのヴァイオリン独奏は、ゲルハルト・ヘッツェルとのことだが、ここは見事。クライマックスを冒頭に置かずに、7部、8部と次第に調子が上がっていくような演奏スタイル(解釈)になっているのかも知れない。

こちらは最初からCD発売だと思うが、やはりツァラトストラにトラック分けがないのが、やはり惜しい。

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