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2010年3月 7日 (日)

スピードスケート 清水宏保氏 引退

スピードスケートの清水宏保氏が引退会見を行った。

その前日に、「新たにす」という新聞三社(日経、読売、朝日)の共同ポータルサイトの新聞案内人のコーナーに 吉井妙子(スポーツジャーナリスト)『清水宏保コラムと記者のため息』という「新聞案内」が載った。

長野オリンピックで500m金と1000m銅、ソルトレークで500m銀(金を獲得した地元アメリカ代表 の疑惑のフライングがあっての上で合計タイムたったの0.03秒差で銀。http://tanupack.com/tanupack/aic/8.htm が非常に詳しい。このような克明なディジタル記事が保存されていることの価値!)を獲得し、500mの以前の世界記録保持者でもあった超一流スケーターの清水宏保氏のコラムをオリンピック期間中に読み大変感心た。

銅メダル獲得の加藤選手への叱咤激励、キム選手と浅田選手のショートプログラムでの息詰まる対決への清水氏ならではの観点からのコメントについてはこの「新聞案内人」でも触れられていたが、中では今回のオリンピックへのJOC役員、メンバー派遣の多さ、主役である肝心の選手の待遇などを告発したコラムが強く印象に残った。

これまで多くのマスコミの記者たちが知っていて知らぬ振り、または多くのしがらみで発言できなかった問題を、一流アスリートの勇気が白日の下に晒す結果になった。それはちょうど、イタリアでの記者会見を朦朧状態で行った大臣の様子を、既存体制と持ちつ持たれつの日本の同行記者たちは当初報道しようともせず、外国メディアによる報道によって日本国民に知らされた例と似通ったものだと思った。現在の日本のマスコミへの私の信頼は低下している。

さて、このオリンピックで日本代表選手が、リュージュやスケルトンで、選手の体重オーバーやソリへの認証ステッカーを剥がしてしまった問題での失格があった。これは、同行した役員が選手第一を旨としてきちんと任務を果たしていれば起こりえなかったのではないかと思う(ただ、このソリ競技では開会式前のグルジア選手の練習中の死亡事故や、その後のスタート地点変更などにも関わらずボブスレーでさえ裏返し走行になるような、極度に危険なコースではなかったかと思われ、それが普通の大会ではありえないと思うような不可解な体重やシール騒動の一因なのかも知れない)。

不況下の日本で、スポーツ予算の潤沢な国に比べては潤沢ではない血税を選手の活躍のためではなく、本来は選手に奉仕すべき「御偉い役員様」のために使っているというのが、上述の持ちつ持たれつと同様に、現在日本が陥っている多くのしがらみや既得権益による歪み、閉塞感、「上に立つものの」公正さの欠如を象徴しているのかも知れないと思った。

ただ、清水氏の勇気をもった告発を掲載した新聞の英断を評価する(外部権威の利用という評価もあるかも知れないが)とともに、マスコミとしてそれを単発的なガス抜きにしない何らかのフォローや取組みが必要だろう。そうでないと、清水氏は梯子をはずされた形になってしまう。

なお、「新聞案内人」で取り上げられた現場のマスコミ関係者への奮闘を垣間見た清水氏の、自らのアスリート時代の取材への対応の悪さへの真摯な反省は素晴らしいものだが、勝負、記録に全力を賭している現役のアスリートにそれを期待するのは、まずは最大限の実力発揮が至上命題なので、周囲やマスコミに過剰に気を遣う必要はないのではないかと思う。マスコミも職業意識をもったプロであり、彼らもそこを理解しているはずだから。少なくとも、第一線を退いた後の感慨としてはいいが、後輩のアスリートたちにそれを求める必要はないだろうと思った。

とはいえ、162cmという小柄な体格と喘息というハンディを乗り越え、真にスピードスケート短距離の世界の頂点を極めた清水宏保氏の引退を寂しく思うとともに、これからの活躍を願いたい。

参考:2月26日の夕刊紙のサイトに清水氏コラムを紹介している記事があった。スポーツ予算をムダ食いするJOCの役員メンバー 夕刊紙だけあり、少々脱線もあるが。

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