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2010年4月 7日 (水)

ハイドン 弦楽四重奏曲No.67ニ長調「ひばり」 ヴィーン・コンツェルトハウス四重奏団

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ハイドン 弦楽四重奏曲 第67番 ニ長調 作品64-5 ホーボーケン番号Ⅲ-63 『雲雀(ひばり)』

Haydn: String Quartet No.67 in D major, Op.64-5 Hob.III-63  "Lerchen(The Lark)"

  1. Allegro moderato 6:24
  2. Adagio cantabile 5:53
  3. Menuetto. Allegretto 3:51
  4. Finale. Vivace 2:29
ヴィーン・コンツェルトハウス四重奏団 1954年録音・モノ
                                            Vienna Konzerthaus Quartet 

                            参考:ベルリン弦楽四重奏団(1985年録音。6:07/5:57/3:39/2:13)

春の野辺と言えば、畑の上空をピーチクパーチク囀り続ける「ひばり」だが、今年の春は異様なほど寒さが残り、麗らかでどこか物悲しいような春空には未だ恵まれていない。

「沈黙の春」という環境破壊を告発したノン・フィクションの題名ではないが、「冷たい春」という感じだろうか。今朝のニュースでは、折角結実した和歌山の梅が記録にないほどの遅霜にやられて実がしぼんでしまい、梅農家の人が今年は梅干が店頭に並ばないかも知れないと絶望的な表情で語っていたほどだった。今年の長期予報での温度予想はどうなのだろうか?

さて、雲雀に話を戻すと、東西の詩人たちが、この口やかましいほどの愛すべきひばりを詩にしており、クラシック系の作曲家ではシューベルトが「聞け聞けひばり」(あのシェークスピアの詩)、メンデルスゾーンも「おお、ひばり」(日本語訳詩は、「ふるさと」の高野辰之博士だという。歌曲集Der erst Frülingstag op.48の第4曲Lerchengesang Op.48-4 がそれだが、歌詞の詩人は明記されていないようだ。)という有名な歌もある。

日本では、1300年も前の天平の歌人大伴家持が「うらうらに てれるはるひに ひばりあがり こころかなしも ひとりしおもえば」(万葉集)と歌っている。(先日の「大仏開眼」というNHKのテレビドラマに、反藤原氏側の貴族として大伴家持が登場したのには驚いた。) 麗らかな春の日に雲雀が天高く舞い上がり声高らかにさえずっているのを聴くと、孤独な物思いをする身には余計こころ悲しくなる、というような意味だろうか。明暗の対照が一つの歌の中に込められ、印象が深まる。

さて、ハイドンのこの「ひばり」四重奏曲だが、IMSLPでは作品64全曲のスコアを見ることができる。第1楽章の高らかに舞い上がるユニークな旋律を「ひばり」と名づけた人物は慧眼があると思う。ただ、第2楽章から第4楽章は必ずしも「ひばり」的な麗らかさではなく、第2楽章は、「春の宵」のしじまに相応しいような音楽。第3楽章は、スケルツォと呼べるような諧謔的なメヌエット、そしフィナーレは飛びすぎていくような無窮動風の音楽。

ベルリン弦楽四重奏団の渋い演奏に馴れた耳には、ヴィーン・コンツェルトハウスの演奏はモノーラルながら楽器の分離がよく録音され、うたいまわしや表情が優美であでやかな雰囲気な演奏になっている。

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