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2010年7月 9日 (金)

ホワイトハウス・コンサートでのメンデルスゾーンのピアノ・トリオ

先日、藤谷治著の『船に乗れ!』第1巻のことをちょっと書いたが、その後第2巻、第3巻を読む機会に恵まれて、一気に読み終えた。この読書の感想は別の記事としてまとめたいが、中年真っ只中の年齢にも拘わらず、若かりし日の心のざわめきを思い出させる作品で、正直言って少々参っている。

さて、まだ幸福感に溢れた主人公とガールフレンドが共演した際に参考にして、親しくなるきっかけにもなった有名なカザルスの1961年のホワイトハウスコンサートの実況録音のことだが、この録音からはカタロニア民謡の「鳥の歌」がFM放送などでもよく使われているが、この録音中一番の大曲であるメンデルスゾーンのピアノトリオ第1番ニ短調作品49は、これまで聴く機会がなかったと思う。

このCDを近所のブックオフで見かけたことがあり、第1巻を読んだときに、あそこで買えるなと思っていたのだが、第2巻、第3巻を読み終えたこともあり、記念というわけでもないが、今日の帰路に買って帰ってきた。

1988年という少々古い発売年の "Pablo Casals The Immortal Monument of Music" シリーズの9巻目、 "Pablo Casals plays in a Concert at the White House" というタイトルで、CBS/SONY時代の 28DC 5108 という型番で、解説は昔懐かしい藁科雅美氏のものだった。当日のホワイトハウスには、USAの音楽界の大立者が多数招かれていたという。

久しぶりに居間のステレオセットで、家族にも聞こえるように普通の音量で聞いてみたのだが、何だかやけに荒っぽい演奏に聞こえてしまい、これではいくら20世紀チェロの巨匠の特別コンサートの稀なシチュエーションの貴重な録音だとは言え、少々辛いのではないかと思ってしまった。録音が1961年という既にステレオ録音が普及していた時期ながら、モノであることもあまりよい印象を得られなかった原因かも知れない。

ところが、その後、iTunesでHDDに取り込んで、PCでいつもの小型のステレオイアフォンで聴きなおすと、演奏自体はカザルス的なつっけんどんな無造作さはあるものの、シュナイダー、ホルショフスキーとのアンサンブルもまったく粗雑ではなく受け渡しも巧くいっており、細かいニュアンスもよく聞き取れる素晴らしい演奏に聞こえたから驚いた。むしろ、ステレオセットで聴くよりも粗が目立つだろうから辛いと思っていたので。

メンデルスゾーンの音楽は、壊れそうなほど繊細緻密というわけではないが、それでも細部までニュアンスが聞き取れることが音楽のために必要なのだろう。

第1楽章の焦燥感のある、激した(agitato) Molto Allegro と夢見るように美しい第2楽章の生き生きと(con moto) 、静寂に (tranquillo)(という矛盾した指定)のあるAndanteは、小説中でとても分かりやすく、そして効果的に解説され、この作品の要として用いられていたので、しばらくこの音楽を聴くたびに、『船に乗れ!』の場面場面を思い出してしまいそうだ。

この小説ではそれほど音楽が小説に緊密に結びついている。衒学趣味で用いられることの多いクラシック音楽だが、この「音楽青春教養小説」ではそのような瑕疵はほとんどない。

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