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2010年9月 5日 (日)

椎名軽穂『君に届け』 と 利他的な性格が嫌われるという実験

残暑といいながら、猛烈な日差しがやむことが無い。日の出日の入りはすっかり秋めいてきて、金曜日には鰯雲が空を飾り、神々しいほどの落日の風景も見られたのだが、連日33度C越えの最高気温と、25度C越えの熱帯夜で、夏バテ気味になってきた。

日本では、この夏は、近代的な気象観測が始って以来の暑い夏として記録されそうだという。今年の春が異様に寒かったけれど、その反動のような暑さ続きだ。

さて、「君に届け」は少年少女のピュアな恋愛を扱ったコミックで、月刊少女漫画雑誌に連載中。昨年アニメ化されてから、少女漫画ファンの女性から一般男性にまでファン層が拡大し、私などはこの8月にYahooのGyaO!で何気なく無料第一話を見たところすっかりはまってしまったクチ。妻ともどもコミックの第1巻から第11巻まで購入して、高校生のウブでピュアな「少女漫画の王道」とも言われるような恋愛模様に一喜一憂しているほどだ。

この作品に男性ファンが多く付いたのは、アニメーションの出来もよかったことがあるだろうし、男性ファン層には多分恋愛シミュレーションゲーム(作中にも名前が登場する「ときめきメモリアル」とか、最近一部で中毒者まで出しているらしい「ラブプラス」など)のファンも多いのではないかと、某巨大掲示板のやり取りをロムしていて思った。ヒロインの心の中のモノローグが多い作品なのだが、ヒロイン役の声優がそれを見事に演じていたし、効果音楽も場面場面での使い方がとても巧いものだと思った。

さて、この作品の原作のコミックには、作者のあとがきならぬ「途中書き」がところどころに挟まれているのだが、第一話は元々それまでの作者のドロドロの恋愛模様の前連載作からの気分転換的な一話読み切りとして、陰気な外見の少女と、呆れるほどとことん爽やかな少年が惹かれあう様子を描いたもので、それがいつの間にか長編に発展したのだということが書かれていた。

作者のコンセプトで書かれているように、ヒロインの外見は、ホラー映画「リング」の貞子のような長い黒髪で青白い肌の無表情で陰気な雰囲気の少女で、同級生達からは霊感があると噂され、敬遠され、孤独を強いられるという設定になっている。

一方、その少女はけなげで前向きであり、自己犠牲、利他的な性格であり、勉学や家庭的な能力が高いことが、ヒロインの相手役となるヒロインとは正反対で爽やかで明るく誰とも分け隔てなく接することができる陽性の性格の少年からのアプローチによって次第に周囲に知られて行くというのが大まかなストーリーで、この少女と少年の恋が紆余曲折を経ながら育まれていく様が丁寧に描かれている。

少女が親友を獲得するエピソードなどは大変感動的で、いい大人が目頭を熱くしたほど。一種のシンデレラストーリーではあるが、それに留まらないものがある。

ただ、この少女と少年が相思相愛であることを互いに確かめ合い、恋愛的に成就した後でも、少女の謙遜、自己卑下、自己犠牲、利他的な性格は多少の変化はあったとしても変わることなく、その少年と親友や一部の理解者以外には、いまだに多少敬遠されている存在であることが、違和感としてひっかかっていた。

そんなおり、最近のネットの記事で下記のようなものを読んだ。

http://wiredvision.jp/news/201008/2010083123.html

「利他的な人」は嫌われる:実験結果

この実験はもともと、ずるい振る舞いに対して予想される社会的排除の研究として計画されたもので、利己的でないプレイヤーは、対照実験のために用意されていた。


ゲームが終了した時点で、参加者たちは、
どのプレイヤーと再びゲームをしたいかを尋ねられた。ほとんどの参加者は、欲張りのプレイヤーとは一緒にプレイしたくないと答えた。これは予想どおりだった。予想されていなかったことは、参加者のうち多数派が、非利己的なプレイヤーとプレイしたくないと答えたことだ。その理由は、「あの人のせいで自分が悪く見える」とか、あの人はルール違反をしているというものだった。利己的でないプレイヤーに、何か裏の目的があると疑う参加者もいた。

この実験自体、まだ追試を行う必要のものであり、「利己的でない」というプレヤーが全面的にこのコミックの少女の性格と一致するものではないが、「いい人」「けなげな人」「謙遜な人」「でしゃばらない人」「自己卑下の強い人」「利他的な人」が意外とグループの中で浮いたり軽んじられたりするということを、自分でも体験、経験したことがあったので、人間の心理の綾には、このような素朴とも言える性格類型にしてもまだまだ分かっていないことがあるのだなと思った次第。

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コメント

ふーむ。なかなか興味深いですね。いや、実験のほうが(^o^;)>poripori
「類は友を呼ぶ」ので多数派が集まり、「類を見ない自分本位」と「類を見ない善良さ」は浮いてしまうのかな、と解釈しました。
私も、「群れる人々」と「群れたがらない人」とがいるように感じています。

narkejpさん、コメントありがとうございます( ^ω^ )

いい中年男性が少女漫画のことをブログに掲載するのは結構勇気がいりましたが(^-^;、「実験結果」が興味深かったので、結びつける形で記事にした次第です。

それにしても、人間の心理、集団心理というのは摩訶不思議なものですね。この実験は「ゲーム理論」に合い通じるものがあると思うのですが、非常に限定的な状況もあり、そのまま社会一般に通用するものでは無いとは言え、
>「あの人のせいで自分が悪く見える」とか、あの人はルール違反をしているというものだった。利己的でないプレイヤーに、何か裏の目的があると疑う参加者もいた。
という感想や印象が生じるところが結構驚きました。

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