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2011年8月18日 (木)

ジブリ映画『コクリコ坂から』(宮崎駿企画脚本、宮崎吾朗監督)

昨年公開の『借り暮らしのアリエッティ』は、原作の『床下の小人たち』(The Borrowers 直訳では、借りる人達)は読んだものの、映画は見に行かなかった。原作は、長編シリーズの第1作ということもあるのか、ストーリーの動きも少なく、背景や状況説明が多く、あまり惹かれることはなかったが、アニメーション映画の方は、ジブリ的な換骨奪胎により、それなりに面白いものになったようだ。

今回の映画は、前々回の壮大なファンタジーシリーズの映画化としてはその換骨奪胎が行き過ぎて、まったくテーマとはかけ離れた異形の作品(ゲド戦記)を作った宮崎吾朗(宮崎駿の息子)が、再び監督をしたというもので、興味半分、心配半分だった。昭和30年代の横浜が舞台ということもあり、本屋にはメディアミックス商法たくましく原作のコミックも売られていて、興味があったので、文庫版を求めてみた。題材的にはおもしろかったものの、構成があいまいなよくあるような感じの少女漫画だったので、これを基にどんな商業アニメーションを作るのだろうという危惧は高まり、チケット代が無駄ではないかと、前売り券を買った妻も心配したほどだった。

右足がほとんど治って安心した先週土曜日に近くのシネコンに久しぶりに見に行ってきた。(すでにこのときには左足の違和感はまだ痛みにはなっていないものの、結構強くなっていた。)

結論的は、こちらは、少々頼りない感じの原作を巧みに整理し、主人公のキャラクターを際立たせ、東京オリンピック開催前の一時代をくっきりと切り取ったすがすがしい青春譜になっていた。パンフレットは妻が買ったのだが、宮崎駿が書いた「企画書のような覚書」という文書が掲載されており、なるほどこのように原作をアニメ化するのかという教科書のような文章になっていて感心した。

ジブリ的に少々類型的となった仕掛けが随所には垣間見られたが、子が父にささげるオマージュとして見ることも可能かと思えた。

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