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2011年9月11日 (日)

ベートーヴェン 合唱幻想曲 ハ短調 作品80 ブレンデル、ハイティンク/LPO

第九交響曲の先駆的作品であり、「歓喜の主題」の先取りでもあるとされる「合唱幻想曲」ハ短調作品80を聴いた。

「幻想曲」(fantasia) というのは、自由な形式による楽曲という意味なのだが、日本語では(他の言語では分からないが)「幻想」という語感が強すぎて、「幻想」的と言われると、シュルレアリムス絵画で表現されているような現実離れをした、夢幻的な様子をつい連想してしまうきらいがある。

この曲は、以前聞いたことがあるはずだが、冒頭のピアノ独奏部は記憶に残っていなかった。しかし、歓喜の主題に似ていると言われるピアノとオケによる主部の長調の旋律や、合唱による旋律の部分はさすがに覚えていた。

このCDは、久しぶりにブックオフに立ち寄り250円/500円コーナーを眺めていて見つけたPHILIPSの名曲全集シリーズ(An Excellent Collection of Classical Music)のMP-139という型番のもので、ブレンデルのピアノ独奏、ハイティンクとロンドンフィル・合唱団(ジョン・オールディス合唱指導)の1970年代の録音のもの。メインは、「皇帝」協奏曲なのだが、その余白に合唱幻想曲がフィルアップされていたので、購入した。

ところで、このCDのブレンデルのピアノが実に美しい音に聞こえるのには驚かされた。1976、1977年のアナログ録音だが、まったくびりつきやひずみもなく、透明感があり煌めくような高音部や、ずっしりと迫力のある低音まで聴くことができ、何よりも音に芯と実在感があるのが好ましい。それに比べるとオーケストラの録音も悪くはないのだが、少し舞台奥の背景的に聞こえ、若干雰囲気的な音になっているのが惜しまれる。なお、最後に登場する合唱は、発声の息擦れの音も聞こえるほどでとても明瞭な音で録られている。

メインの「皇帝」だが、第一楽章冒頭のピアノのアイガング的な部分の解釈というか演奏スタイルが自分としてはとてもしっくり来た。慎重で学究的なイメージのブレンデルだが、この曲の外連み的なこの部分の効果を自然に迫力をもって弾き切っている。今から30年以上前の壮年期のブレンデルの充実がうかがわれる好演だと思った。しばらく聞かないでいたが、音を含めて自分はブレンデルのピアノが好きなようだ。(2008年5月31日 (土) ブレンデルのベートーヴェン『月光・悲愴・熱情』(1970年代録音)

探したら、「皇帝」「合唱幻想曲」の一枚を含む70年代のソナタと協奏曲の全集が昨年廉価ボックスとして発売されているようで、少々食指が伸びそうになっている。

Youtube
Beethoven.- Fantasie für Klavier, Chor und Orchester op 80.
Alfred Brendel : Klavier
Stuttgart Lehrergesangverein
Stuttgart Philharmonic Orchestra
Wilfried Boettcher: Dirigent

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