N響アワー 辻井伸行と外山雄三指揮N響協演によるチャイコフスキー
先日、読売日響のテレビ「深夜の音楽会」で、辻井伸行のピアノによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を視聴し、堂に入った協奏曲演奏だと感心したが、9/25(日)夜9時からのN響アワーで、今度はNHK交響楽団との初協演となるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を聴き、ピアニストと指揮者、オーケストラの間の「協演」ぶりを堪能できた。
先日、このブログで少々辛口に、樫本大進とN響のスペイン交響曲について書いたのだが、それとはまったく対照的に、今回の演奏は、張り合うような競奏や方向性の違う競演ではなく、協力して奏でる協奏曲だった。
超有名曲、人気曲のチャイコフスキーのこのコンチェルトだが、実を言えばあまり好きな曲ではなかった。それはこれまで聴いてきた演奏や録音が、「競奏」の趣が強いものが多かったせいかもしれないと、今晩のテレビを見ながら思い至ったほどだ。
辻井のピアノに対する百戦錬磨のベテラン指揮者の外山雄三とN響のサポート振りは見事で、相当ややこしい難所でもきちんと「協奏」になっており、フレーズの受け渡しなどは実に自然で素晴らしかった。盲目であるハンディキャップなど全く感じられず、外山もアイコンタクトが無いのに、辻井のピアノをしっかり受けとめていたようだ。(チャリティーコンサートということらしく、N響アワーのアナウンサーがコンサート会場で、辻井にインビューしている模様が映し出され、辻井はリハーサルと違うように自由に弾かせてもらったが、指揮者・オーケストラが完全にぴったりと付けてもらってとても気持ちよく弾けた」と語っていた。)
辻井のピアノは、とても技巧に余裕があり、丁寧、誠実なもので、引き飛ばしなく、作品の形式感を解きほぐして再提示するかのような演奏ぶりで、よくある形式感の薄い猪突猛進型の爆演とは、一味違うものだった。三つの楽章とも、きちんと形式が提示された演奏は珍しいのではなかろうか?
ただ、この曲で全体的にあえて欲を言えば、たたみかけるような躍動的なリズムとさらなるダイナミックだろうか。その意味で、辻井のテクニック、メカニックは余裕のある見事なものではあるが、ラフマニノフやチャイコフスキーのような技巧的な難曲、大曲だけでなく、モーツァルトの協奏曲も聴いてみたいものだ。
アンコールは、チャイコフスキーの「四季」から「トロイカ」で、情景描写的ではない、印象としてのトロイカの演奏で、とても細やかな演奏だった。
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