モーツァルト ミサ曲全集 ペーター・ノイマン&コレギウム・カルトゥジアヌム、ケルン室内合唱団
EMIから出ていた選集を買い逃していて、残念に思っていたペーター・ノイマンのモーツァルトのミサ曲集が10枚組の廉価BOXで8/29再発されるということを知り、HMVに予約を入れていたところ、8/30に早速配達された。
1990年代にピリオドアプローチで録音されたもので、コーラスの水準が非常に高いという評判だったのでぜひ一度聴いてみたかったのだ。
すでにモーツァルトの宗教曲集は、PHILIPS/小学館の全集で主にヘルベルト・ケーゲルが指揮したものを聴いており、初期のミサ曲のうち特に孤児院ミサ曲ハ短調の素晴らしさに驚かされ、ヴェスペレや、ベートーヴェンの第九のメロディーを先取りしたかのようなオッフェルトリウム「ミゼリコルディアス・ドミニ」ニ短調K.222(205a
今回、改めて孤児院ミサ曲や、未完のハ短調の大ミサ、レクィエム、戴冠式ミサなど有名曲をざっと聴いてみた。ソロ歌手で知っている人は、テナーのプレガルディエンや、カウンター・テナーのマイケル・チャンス程度。コーラスはすっきりとしているが、ハ短調大ミサのッソプラノソロの歌手の声質は必ずしもそれに合っているとは言えない人もいるようだ。
ピリオドアプローチで、孤児院ミサ曲では、ところどころ個性的な管楽器の音色に驚かされたりもしたが、どれも非常にすっきりした解釈と音響で聴けるものだった。特に初期のミサ曲の演奏がよいようだ。CD1のK.49(47d)の冒頭のKyrie を聴くと一気にモーツァルトの天才と、この演奏の質の高さに引き込まれてしまう。
ところで、この録音もよく、質の高い演奏のCDを聴いて改めて思ったことなのだが、モーツァルトのミサ曲は、レクィエムを除いては一般的に音響分布的には少々ハイ上がりなのだろうか?これは、LP時代の少々録音がこもりがちなコリン・デイヴィスの「戴冠ミサ曲」を聴いて以来感じているのだが、もう少し低音をしっかり響かせた方が、上滑りしたような音楽に聞こえることなく、音響的に落ち着くように感じるのだが。低音不足はケーゲルでも感じたし、ガーディナーでも感じた。しかしレクィエムは、ベームもカラヤンもこのノイマンも低音の不足感は無かったけれど。
今回の、ノイマンも全体的に低音はあまり強調せず、ゆえに繊細な感じなのだが、曲が少々軽やかに感じすぎ、特に中期のケッヘル300番台では、その点を改めて意識したせいか、以前には思わなかった作品の世俗的な美しさに傾いた性格(つとに宗教曲としては「美しすぎる」と批判されていた)を感じさせるのかも知れないと思ったりもした。
今、K.192(186f)のヘ長調のミサ・ブレヴィスを聴いているが、クレドのテーマ(モチーフ)が、モーツァルトが好み(ハイドンのいくつかの交響曲にも出てくるので何か当時の時代の暗号的な象徴なのかもしれないという想像もできるが)、晩年の交響曲第41番の第四楽章にも使った「ジュピター音型」が使われていた。この記憶力がいい作曲家が、あえて何度も使ったテーマ(モチーフ)は、潜在意識や本能的なものとしてやはり重要なものなのだろう。
それにしても、ザルツブルクの少年音楽家時代のケッヘル100番以前、100番台の同じラテン語のテキストに付けた多くのミサ曲を続けて聴いてみても、それぞれ工夫が凝らされており、同工異曲と言えばそうなのだが、それぞれ独創的な作品に仕上がっており、やはりすごいものだと思われる。
なお、ミサ曲は、全集だが、アインシュタインが絶賛した有名な2曲のヴェスペレは、このシリーズには収録されておらず、K.339が別レーベルで録音されているようだ。
http://ginjatei.blog27.fc2.com/blog-entry-11.html
ミサ曲全集を作っただけでも素晴らしいが、このレベルで他の多くの宗教曲も録音してくれたらと思うのは、少々欲張りだろうか?
痛風は、左足にうつって2週間ほど経つが、いったん痛みが治まったあとのぶり返しが来ている。なかなか以前の生活に戻れないでいる。
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投稿: narkejp | 2011年10月 2日 (日) 19:38
narkejpさん、こちらにもコメントトラックバックありがとうございました。
私も、充実したモーツァルトチクルスの聴ける山響の定演に伺いたいものですが、如何せんまだ先立つものや時間がないため、何とかして身近の、せめて学生オケでもいいので、「孤児院ミサ曲」の実演を聴く機会を作りたいものだと思っております。
投稿: 望 岳人 | 2011年10月 2日 (日) 22:34