BDレコーダー(Panasonic DIGA)のDLNAサーバー機能で録画番組をPCで再生してみた
◆パナ製BDレコーダーのDLNA機能
今期の業績がひどく悪いと報道されているパナソニックだが、昨年購入したパナソニックのBDレコーダーの性能や使い勝手には結構満足している。こんないい製品を作っているのに、どうして儲からないのだろうか、という感じだ。実際、価格コムなどを見るとパナのBDレコーダーDIGAはそれなりに売れているようなのだが。
早朝や深夜のクラシック音楽番組や見逃すことの多かった連続ドラマなどの視聴での楽しみが増えたのは、同時3番組録画可能な予約のしやすさや、画像や音声の不満が少ないこのレコーダーのおかげだ。
一部、レコーダーでDVD-Rにデジタルで録画保存した番組を簡単にPCで再生できないのには不便を感じていた。これはBDレコーダーそのものの問題ではなく、著作権保護などの決まり・仕様の問題だということは分かっていた。たとえば、レコーダーに録画した番組をレコーダーでCPRM対応のDVD-Rにしかダビングできないのだが、一応他の機器でも見られるようにVRモードでダビングしても、CPRM(Content Protection for Recordable Media、例のコピーワンスだとか、ダビングテンに関係する規格)対応のプレーヤーでないと再生ができないので、Windows 7 Home に含まれている後述の Windows Media Center はこの規格に対応していないため再生できない。これは、PCにバンドルされてきたコーレル社製のWinDVDならば、ユーザー登録することで、CPRM解除のソフトをダウンロードができ、これをインストールすることで、上記DVD-Rをようやく再生できることになることに最近気が付いて実行することで解決したのだが。
さて、最近になって、タブレットやスマートフォンの機能として、BDレコーダーなどに備わっているDLNAを利用して録画番組を寝室や風呂(防水機能が必要だが)で見て楽しもうというような記事がネットに掲載されているのを読み、これなら以前からカタログや取説でBDレコーダーに備わっていることを知っていたDLNA(「お部屋ジャンプ」)機能を使い、ノートPCでも無線LANでの視聴ができるはずと、調べてみた。
DLNAは、Digital Living Network Alliance の略で、家庭内でも各種デジタル機器をネットワーク接続できるような仕様や規則を策定する団体とその仕様や仕組みのことのようだ。
昨年BDレコーダーの設定時に、有線(または無線)LANを使ってネットワーク接続ができ、PCを接続しての番組予約や録画リストの編集ができる「アクトビラ」などのサービスを利用でき、テレビでYoutubeなど見ることができることは確認済みで、これらを暫く使ってみたがADSL接続の速度の問題や、またTsutayaなどは有料コンテンツということもあり、さらにリモコンによる操作性があまりよくないことで、有用性をそれほど感じていなかったので、しばらくLANケーブルを抜いたままにしていた。
◆DTCP-IP対応のDLNAクライアントソフト(有償ライセンス)
今回、PCとDIGAをつなげて録画番組を見るためにはどうすればいいのだろうかと"DIGA DLNA PC"などのキーワードで検索してみると、すでにDTCP-IP対応でDLNAにそのままつながる仕様のPC(富士通やSONYなど)も販売されているらしい。しかし、普通のPCでは、DTCP-IP対応DLNAクライアントソフトをインストールしてやらなければならないことが分かった。つまり、BDレコーダーをサーバーとして使うので、PCをそのクライアントとする必要があるということだ。この時点では、なぜかフリーウェアがヒットしないことが気になっていた。(既に2009年時点からこのトライアルを行っている記事も見つかった。)
(DTCP-IP : Digital Transmission Content Protection、日本独自のデジタル著作権保護規格。ところで、現在のコンピュータのサーバー、クライアントの使い方ではサーバーの方が「偉く」、クラアントの方が「部下」のような印象を持ってしまいがちだが、本来はサーバーが給仕する人、サービスする人であり、クラアントは顧客や雇い主、依頼主ということだ。言葉の意味の逆転現象が起きるのかも知れない。ただ、現実にも、弁護士がサーバーで、依頼人がクライアントという場合、法律に関する知識レベルはサーバーの方が高いので、これでもいいのかも知れないが。)
さて、DTCP-IP対応DLNAクライアントソフトについてはこのサイトが詳しく、参考にさせてもらった。
一般に入手可能なのは、以下の二種類のようだ。要求スペックは、現在使っている自分のPCのものより概ね高いので、実際に使えるかどうかは、この段階では不明だった。
サイバーリンク SoftDMA 2のオフィシャルサイト
デジオン DiXiM Digital TV (plus)の記事
これを参考にして調べてみると、SoftDMA 2にはPCが要求スペックに対応しているかを測定するアプリが提供されていたので、これをインストールして調べてみると、CPU自体がグレー(対応するか不明)、グラフィックカードもグレー、グラフィックカードドライバは赤(対応不可)と出てしまった。(この時点ではこれには体験版はないらしいと思っていた。)上記比較サイトでは、SoftDMA2の方が動作が軽快との評だったので、がっかりしたのだが、DiXiM Digital TV (plus)を見てみると、体験版が提供されているというので、念のためトライしてみた。(SoftDMA2のオフィシャルサイトからは、無料体験版へのリンクが張られていたので、こちらも体験版の試用が可能のようだ。)
◆DiXiM Digital TV (plus)体験版で試してみる
結果的には、体験版で試してみたのがよかった。
BDは普段LANケーブルを接続しないでいるのだが、これを無線LANの親機兼用のルーターに接続して、BDのDLNA機能のメニューから、PCとの接続をまず試してみた。ネットワーク内のPCをクライアントとして認識する画面がテレビ画面に出てはくれたが、そこから先に進まない。それではと、改めてネットワーク設定をDLNAが使えるようになっていたかを確認してみると、以前設定した後また初期値に戻していたようなので、改めて設定しなおし、PC側で体験版を起動した。すると、PCのソフトは初めのうちはサーバーを探していたが、しばらくするとBDレコーダーに保存されている番組の一覧表がPCに表示された。(一覧表が表示されるまでの時間を計ったら、約2分かかった。録画番組を500GBの内蔵HDDにHZモードというディジタル録画モードとしては最も長時間録画できるモード、つまり最も低画質で低容量モードで大量に入れているのも時間がかかる要因だろう。)
そのリストから「ブラタモリ」を適当に選んで再生してみると、ソフトとしての動作はサクサクではないものの、動画の動きはそれほど不自然ではなく、PCのディスプレー一杯に画面を広げて再生してみてもワンセグよりはずっと滑らかでノイズもなく鮮明で、「まあこれならば」程度には見られるなと思った。ただ、この時点では音声の再生は確認していなかった。なお、先にも書いたがレコーダーの保存画質は最も長時間録画できるHZというこのBDのデジタル録画では最も低い(小容量)もの。別のブログなどでは、DRというオリジナルの最高画質で試してみている方の記事もあったが、自分の環境ではネットワークの弱さとPCの非力さで無理だろう。(ただ、ほとんどがHZの中、たまに鉄道番組の車窓からの風景など絶えず動きのある画像ではHZでは画像が乱れるのでHLで録画してあるが、これも問題なく再生できた。DIGAシリーズでは、DRモード、HGモード、HXモード、HEモード、HLモード、HMモード、HZモードの順の設定があり、HZはDRの約10分の1の容量。またこのほかに標準画質のXP,SP,LP,EPというモードもあるがDVD-RにVRモードでコピーするときに使う程度だ。)【追記2012/03/23:DRで録画している番組を再生してみたが、地デジ番組は問題なく再生できた。さすがにオリジナル画質なので、肌理細やかだ。しかし、BSのものは映像は綺麗に問題なく再生できるのだが、音声が途切れ気味になってしまった。】
◆DiXiM Digital TV (plus)のダウンロード版
調べたところ、IOデータのショップでは、たまたま2/29までが割引期間ということもあり、DiXiM Digital TV (plus)のダウンロード版を購入してみることにした。
ダウンロードとインストールは順調に進んだので、早速正規版を動かしてみた。体験版よりも動作がもっさりしてはいるが、どうやら別室でPCで録画番組を楽しめるようになった。
確認していなかった音声もノイズもなく、ステレオで楽しめる。この間、BDは電源をOFFにしていたが、バックグラウンドでネットワークサーバーとして動いているらしく、番組をPCに送ってきてくれる。不満といえば、PCとネットワークが非力のせいだろうか、ソフトのプレーヤー機能の早送り、巻き戻しや、タイムシフトなどの再生中の操作の反応が鈍いこと、映像と音声の同期が若干ずれること、ドラマなどで人物の動作が若干素早く見えること程度。
この高機能版のplusというソフトウェアとplusなしの通常版のソフトとの違いとしては、スカパーにも対応していることが強調されているが、我が家ではスカパーは見ていないので不要。plusありは、さらに、録画番組再生以外に、写真や音楽、動画などのサーバーからの読み出しもできる機能があり、ネット内で動画がそれなりに見られること自体それなりにすごいことなのだが、まさにこのようなファイルの扱いはBDレコーダーがDLNAサーバーであることを実感できる。ただ、私の環境では写真などでもサクサクと動くわ けではないので、あまり実用には適していない。(音楽は、CDを試しにBDレコーダーに取り込んではあるのだが、リスト表示されるのはPC内のものだけで、BDレコーダー内のものは出てこない。)
なお、上記の比較表では分かりにくいが、オリジナルのデジタル録画モードであるDRモード以外のHZモードなどの圧縮モードでの再生、つまりMPEG-4 AVC(H.264/AVC)対応は、plusなしのソフトでも対応している。
こうして、狭い我が家とはいえ、二台目の録画番組再生機としては結構使える環境ができた。
◆使用後の感想など
1.二ヶ国語放送、字幕放送の切り替えまでは、クライアント側からは操作できないようだ。
2.ソフトウェアのFAQサイト http://optmarket.jp/support/faq/diximdtv/ はあったが、ダウンロード版では操作などは、オンラインマニュアル(ヘルプ)は無いようで、アプリ付属の別ファイルのヘルプ頼みとなる。サポート窓口もあるようだ。
3.BDレコーダーで同時に同じ録画番組を見ていても、その番組をPCでも視聴可能。さすがサーバーといったところだろうか。
4.内蔵チューナーで2番組以上同時録画中には、サーバー機能は使えないようだ。これは、DIGAの取説に書かれている、「複数の番組を録画中には再生できない」という条件に当てはまるもののようだ。ただし、パナのDIGAのカタログ(2012/1-2)掲載の製品では、廉価機種以外は、3番組録画中でもDLNA機能は使えるとのことだ。しかし、最新機種でもBDビデオ再生中または他のネットワーク機能使用中は使えないとのこと。
5.マニアではなく、コモディティー的に老幼年代でも使えるようになるためには、待ち時間の短縮や他のネットワーク機能使用中にはDLNA機能が使えないなどの制限が撤廃されなければならないだろうとは思う。そのためには、相当な高速回線が必要となるだろうし、相当なスペックのPCも必要となろう。
◆DIGAのDLNA活用のブログ記事など
- DIGAでDLNA構築 http://rockers.exblog.jp/14021660/
- スマホのアロウズでDLNAを使用 http://whitesdiary.seesaa.net/article/244458976.html
- PCをサーバーにしようとしたが http://d.hatena.ne.jp/su1/20110913/p2
- DTCP-IP対応がない場合にはどうなるか http://blog.goo.ne.jp/kohonaosumaka/e/4c8cddbb6a6f7b26a276478ee8d425ab
- 導入 http://optmarket.jp/support/faq/diximdtv/
- 詳しい導入 http://kowloonet.org/blog/2010/05/dixim-digital-tv-plus.php
- amazonレビュー http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%82%AF-Dixim-Digital-TV-Plus/dp/B0054U5GR8
◆参考:デジタル著作権管理など
デジタル著作権管理は、国別の法制度の問題やグローバルビジネスの問題がからんでいて複雑なようだ。
◇"DLNAクライアントサーバー"で検索していたら、つい先日フリーソフトのDLNAクライアント&サーバーソフトが公開されたのを見つけた。まだ不安定ということだが、昨年のPCの購入を決めた後に、すぐ新製品が発売されたのと同じようなことがたまにあるのは不思議だ。ただし、DTCP-IPには未対応。
◇プレーヤーソフトではPowerDVD11 Ultra/Deluxeが DTCP-IP対応(サイバーリンク SoftDMA2と同じ会社)になっているようだ。
◇我が家のBDレコーダーは、外付けHDD未対応だが、外付けHDDに録画してDLNAで再生させる場合には、やはりDTCP-IPに対応していることが必須とのことだ。
◇採用実績では、富士通製のスマートフォンや上記記事でもとりあげたArrowsタブレットへの搭載が先行しているようだが、今度はMEDIAS(NECカシオ)向けにもデジムのDTCP-IPソフトが搭載されたようだ。PCよりも、モバイルの方に流れが来ているらしい。いわゆるコモディティ化だろうか?
◇iPadは、2011年5月現在ではDTCP-IP対応アプリはないらしい。但し、ハードウェアを介在させての再生はできるようだ。(これは、DTCP-IPが日本独自規格であるためらしい。)
◇ようやく日本でもホームネットワークが始まる? ~ DTCP-IP対応の再生ソフト「DiXiM Digital TV」 ~ 2009年 7月 15日 AVWatch
◇新たな既得権益システム??DTCP-IP(個人ブログ 2012/02/07)
◇Windows Media Center で PCをテレビ化 2012年01月24日パソコンをTVにしよう! GV-MC7/HZ3レビュー WindowsMediaCenter対応小型地上デジタルTVチューナー
◇CEATEC: DTCP-IP対応アプリ sMedio True Link+ 2011-10-04 (第3のDTCP-IP対応ソフト)
鍵の漏えいはコンテンツ保護にとって致命傷になりかねないので、リスク対応をできる規模の会社でないとDTCP-IP対応に踏み込めないというのは非常に説得力があるなと思います。これではフリーのDTCP-IP対応アプリなど出てくるはずがありません。また有償であってもリーズナブルな価格でリリースできる可能性は皆無ということになると思います。
DTCP-IPはその敷居の高さから、家庭内ですらコンテンツ運用を難しくしてしまっている実態があり少し残念だなと思います。ライセンス管理や万が一の損害賠償などクリアすべき壁が大きすぎて普及できないというのは、まさにジレンマという他ありません。Hulu等の外国のコンテンツサービスに負けないよう、本当に利用者が望むサービスの在り方をもう一度国内の関連事業者の方々には考えていただきたいなぁと改めて思いました。
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