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2012年2月 5日 (日)

久々のコンサート ゲッツェル/神奈川フィル、三舩優子(pf) 2/4(土)

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 名曲シリーズ オーケストラ名曲への招待 「ハ短調の慟哭」という題名のコンサート、2月4日(土)15時開演 神奈川県民ホール、家族で聴きに行ってきた。

このところ、お茶の間のテレビでBSプレミアムの特選オーケストラライブや、プレミアムシアターなどの音楽番組や、MP3プレーヤーで音楽に触れるだけになっていたので、オーケストラの生演奏を聴くのは、2008年7月27日 (日) 日本フィル夏休みコンサート2008で初サントリーホール以来となる。今年の目標(?)として、生演奏を聴くというのがあったが、まずは一つ果たせた(大げさ)という感じだ。

家族で行こうということで、身近な演奏会を探していたら、カナフィルの先週の土曜日の定期演奏会のブルッフのヴァイオリン曲のプログラムも面白そうだったけれど、あまりクラシック音楽に興味のない次男にも楽しめるようにと、「のだめ」でも使われた曲が2曲も入った今回のコンサートを選んだ。

ローソンのチケット販売機でチケットを購入したが、ブロック指定ができるようで、B席(2000円、学生は1000円)で、県民ホールの3階最後部の席が取れた。県民ホールでは聴いたことがなかったので、そんな後ろの席でしっかりと楽音が届くのだろうかと心配したが、視覚的には遠いものの、楽音はピアニシモからきちんと聴きとれ、相当満足のいく演奏会になった。

指揮者は、サッシャ・ゲッツェル。元ウィーンフィルのヴァイオリニストという経歴を持つ若手指揮者。ピアノ独奏は、三舩(みふね)優子で、曲目は、グリンカ 「ルスランとリュドミラ」序曲、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調、ブラームスの交響曲第1番ハ短調の三曲。メインの2曲がハ短調なので、ハ短調の慟哭と名付けたのだろうが、慟哭というのは大げさだし、曲調にもフィットしていないのでは?

以前、神奈川フィルを地元の狭い公会堂で楽しんだことはこのブログでも書いたが、本格的な大ホールで聴いたのは初めてだったし、県民ホール自体が初めてだった。これまた久しぶりの中華街で子どものリクエストによる梅蘭の「焼きそば」での食事の後、山下公園方向に出かけたのだが、うっかりマリンタワーの方に曲がってしまい、場所が分からなくなってしまった。マリンタワーの1階案内で尋ねたところ、受付の女性が親切にも地図付きで親切に教えてくれ、その後は迷わずにたどり着けた。

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県民ホールは、3階席まで階段を普通のビルのほぼ6階分ほど登らなければならなかったが、2階、3階のロビーからは山下公園を隔てて横浜港の全景が一望のもとに望める大層眺めのよい建物だった。

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山の頂上から見下ろすような3階席最後部の席だったので、オーケストラステージは40mほど前方の谷底にみえ、普段テレビ放送で音楽鑑賞をしているので、演奏者の表情を見えるのが普通と感じている身にとっては、日常生活からはかけ離れた鑑賞シチュエーションになってしまうのだが、それでも軽やかに指揮者が登場し、ロシア音楽ではおなじみの「ルスランとリュドミラ」序曲が潤いのある音響で流れ始めたときから、すーっと音楽の中に溶けいることができた。

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神奈川フィルの弦楽器群の素晴らしさはつとに噂で聴いていたが、第1曲からそれを味わうことができた。このホールの特徴か席の特徴かは分からないが、ホールトーンとして音響が伝わってはいるのだろうが、各楽器の音色や分離が明瞭で、オーディオ装置ではあまり味わえない、ヴィオラとチェロの音が明瞭に聴き分けられ、ヴィオラの音が甘く美しかったのはうれしかった。直線的なムラヴィンスキーの猛烈な音楽のイメージが染みついた曲なので、ゲッツェル指揮の「ルスラン」はそれとは違いより柔軟で美しい音楽だったし、ほとんどこの曲しか聴く機会がないのだが、グリンカの曲の作りの確かさのようなものが感じられた。

2曲目の有名なピアノ協奏曲は、生演奏経験の乏しい自分には珍しく、これまでグレゴリー・ソコロフ、ダン・タイソン(小林研一郎/モスクワ・フィル)で聴いたことのある曲。ただ、彼らの演奏は、相当手慣れたものだったが、あまり感銘した記憶がない。

その後飽きるほど、録音ではこの曲を聞いてきた。久々に生で聞くこの曲だったが、特に第1楽章のテンポが途中大きく減速があったのが気になったり(帰宅してからスコアで確認すると、第1楽章の展開部の後半?or 再現部の前半?のMaestoso Alla Marcia の部分で極端にテンポを落としたりしていた)、オケのアンサンブルがところどころ「あれっ」と思うような部分があったけれど、音響的には非常に重厚な響きが醸成されており、満足できる部分が多かった。ピアニストは、女性ということで、華奢な演奏ではないかと危惧していたのだが、冒頭の和音から堂々とした演奏で、ピアノがオケに埋没するような部分はあまりなく、ピアニスティックなパッセージの豪華さも申し分なく、演奏としては十分満足できるものだった。ただ、全体的には曲そのものの作りのせいか、先述のテンポ設定のせいなのか第2楽章をのぞいて、やけに分裂的(非論理的)な音楽に聞こえた。第3楽章の泣きの入る有名なメロディーをピアノとオケのトゥッティで奏でるクライマックスの部分など、相当ねっとりと濃厚にやってくれていたが、全体的なムードの統一性が自分には感じられなかったのかも知れない。

20分の休憩後の3曲目のブラームスは、これだけの名曲だが、これまで多分生では聴いたことがなかったと思う。この日の重厚な音響と、指揮者の柔軟な解釈は十分堪能できた。ゲッツェルは、しっかりと手中に収めた曲のようで、暗譜であり、指揮台もないため指揮ぶりも表現豊かに、自由闊達な音楽を作っていたように感じた(ジャンプも1回あった。次男は2回跳び上がったのを見たという)。オーケストラは、部分的なキズ(管と弦の特にピアノでのアインザッツがところどころで合わないなど)は別にして、高飛車で失礼な言い方になるが、日本の地方オーケストラでも、これだけ充実したブラームス的な音響が出せるのかとまったく感心してしまうシーンが多々あった。ただ、ベームとベルリンフィルが刷り込みとなって親しんだ曲なので、これほど流動感があってエネルギッシュな解釈・演奏となると、この曲自体のスタティックなイメージが変わってしまうほどで、その意味でも新鮮だった。フィナーレのたたみかけるような盛り上がりは、スタジオ(セッション)録音では味わえないものかも知れない。

相当湧きに湧いた聴衆だったが、アンコール演奏は無く、この日の演奏会は終了した。名曲コンサートとは言え、ここで軽いアンコール曲などがあれば竜頭蛇尾となっていたことだろうから、よかったのではなかろうか。

神奈川フィルのフル編成の演奏を初めて聴いたが、弦楽器群は確かにすばらしいと思う。木管はよいし、金管も悪くはないが、静かな出だしが弦と管とで相当不揃いになる傾向があるようだ。今回の指揮者の指揮のためかも知れないが、そのような部分がオーケストラとしては練れていないのかも知れない。

マニアの長男は相当満足したようだし、あまりクラシック音楽には関心のない次男もラフマニノフを除いては結構楽しめたと言っていた。妻も久々の音楽鑑賞は気分転換にもなったようだ。

終演後には、1階ロビーに指揮者、ピアニスト、オケの関係者が居並び、神奈川フィルの存続募金の呼びかけを行っていた。ブルーダル募金(ブルーの水玉模様のダルメシアンが横浜のシンボルマスコットにいつの間にかなっているらしい)という呼びかけの一環で、助成金を減らした当の神奈川県の関係者も、市民・聴衆に呼び掛けを行っているというのも、ひどい捩じれ現象だとは思うのだが、一聴衆として、乏しいながら募金をさせてもらった。このようなご時世であり、公的資金を減らし、自助努力は必要なのだろうが、減らした当事者の県や市はあまり表に出ない方がよいのではなかろうか?これからも数カ月おきには聴きに行こうということになったので、地元民として是非応援していきたい。

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