ヤマザキマリ「テルマエ・ロマエ」と古代ローマ
2010年7月に読み始めた「テルマエ・ロマエ」(ローマの浴場という意味らしい)だが、その人気が高まって、先にアニメ化(少々しょぼかったが)され、今度は実写映画が公開されるという。
別にそれに関係するわけではないだろうが、今日たまたま放送を観たNHKBSプレミアムの昼12:00から放送のBS歴史館「古代都市ポンペイの真実~新発見!54体の人骨の謎~」を、同じく「テルマエ・ロマエ」を面白がっている家族と一緒に見て、相当相通じる内容で楽しめた。テルマエ・ロマエは、ハドリアヌス帝の時代の浴場デザイナー(設計師)、ルシウスを主人公としたコミカルなSF歴史もの。
ギボンの「ローマ帝国衰亡史」は、学生時代の知人で現在大学の政治学の学者になった人のアパートを尋ねたおり、その背表紙を眺めたことがある程度のローマの知識ではあるが、「テルマエ・ロマエ」に描かれているローマ人たちの生活が、ポンペイなどからの発掘調査で明らかになった当時の奴隷を含めた人々の豊かで平和な生活についての研究に基づいていることが理解できたように思う。
二人の学者(一人は現在の国立西洋美術館の館長)と、元アナウンサーの渡辺真理の丁々発止のやり取りは面白く、ローマ、ポンペイの末裔?のジローラモが少々ベクトルが違う方から参加していたのも興を添えていた。
ローマの衰退は、その繁栄(領土拡大・維持のための軍事費の出費を可能にし、市民への手厚い福祉を可能とした)が原因となって始まったというが、その歴史的な繰り返しは、現代の先進国でも見られる現象であるというような、少々大風呂敷的で粗雑な話は元々好きなのだが、ちょうどつぼにはまった感じではある。パクス・ロマーナを現代のアメリカや先進国にあてはめて、パクス・アメリカーナと言うような議論は枚挙のいとまなくあり、高坂正堯(まさたか)の『文明が衰亡するとき』を想起したりもしたが、実際軍事費と人気取りのための福祉のばらまきというのは、民主政治では解決できないと、さらっとどちらかの学者が漏らしていたコメントは、現代の大阪府、大阪市の政治家の論拠になるようで、少々きな臭く感じた。
ローマは三回世界を征服した。ローマ帝国、ローマン・カソリック、そして近代市民社会法の模範としてのローマ法、という話はどこかで読んだ有名な警句ではあるが、すんなり理解できた良番組だった。
なお、西洋古代史では、岩明 均(いわあき ひとし)の『ヒストリエ』(アレクサンダー大王の書記官エウメニスという人物が主人公)も注目に値する。
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