紅山雪夫 の旅行ガイドに名を借りたヨーロッパ紹介が面白い
紅山雪夫という文筆家の著書を読んだのは、『ヨーロッパものしり紀行 神話・キリスト教編 』(新潮文庫)をブックオフの店頭で見つけて購入したのが初めてだったのだが、 旅行ガイドを生業にしていたということで、旅行ガイド的な説明ではあるが、広く、そして深く要領のいい解説記事の面白さにはまってしまった。
そこで、『イスラムものしり事典』、『ドイツものしり紀行』、『ヨ-ロッパものしり紀行 《くらしとグルメ》編』を相次いで新刊書店で購入し読んでみたが、特に音楽政治経済関係で多少知識があるドイツとは異なる、いわゆる観光ルート(ロマンチック街道など)を中心としたドイツ解説ながら、分かりにくい神聖ローマ帝国時代などを要領よくまとめ、街道ガイドをかねた分かりやすいドイツ史の解説になっており、とても面白いものがあった。ただ、主に南ドイツ、ライン川周辺の紹介で、北ドイツやベルリンなどには触れられていないのが残念ではあるが。
以前世界遺産としてトリア(Trier)のポルタ・ニグラがテレビで紹介され、その町の名を知らなかったと書いたことがあったが、それら歴史的・観光的に著名な地域というのは、ドイツ音楽の関係ではあまり触れられることがなく、この本で読めたのは結構収穫だった。
その他、上述のヨーロッパものしり紀行は、短いコラムの集合ではあるが、一応テーマ的にまとめられていて、それぞれ面白く読め、勉強にもなった。
『イスラムものしり事典』は、宗教の紹介ではなく、現代イスラム教徒の生活と、そこに旅行に出かける際の注意など現実的な知恵、また、イスラム建築について詳しく、堅苦しくないイスラム入門になるのではなかろうか?
他にもフランス、スペインなどをテーマにした本も出ているようで、著者自身旅行ガイドとして現地に何度も足を運んだという背景があるようで、その点実感を伴った解説になっており、気軽に読むにもとても良い本だが、書物的な知識のつぎはぎではない点でもよいものだと思う。
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