『僕が大人になったら』 佐渡裕 (PHP文庫)
満員電車の中でいろんなことをする人がいる。中でも驚いたのは、ストロー付きの飲物を飲み始めた女性。近くにいたくないと思った。もしこぼれたら悲惨なことになる。満員電車の中で、文庫本や新聞を読んだり、携帯・スマホを使うのは、やっている本人はそれに集中しているようであまり罪の意識がないようだが、そのわずかな前方20cmほどのスペースも他のおとなしく立っている乗客には邪魔であり、数人分のスペースが縮小されるだけでも違うのにと思わせるものがある。満員電車ではデイパックなどのリュックサックもスペースをとるからおろして手に持つのが礼儀だというのに。
そんな列車内の文庫本だが、帰宅時のあまり込んでいない車内で、サラリーマン風のスーツ姿の男性が読んでいた本が目に入り、眺めるともなく眺めていたら、ミラノでジュリーニを訪問したとかいう文が読めたので、おそらく指揮者などの音楽家の書いた文庫なんだろうが、誰だろうと頭をひねらせて、翌日本屋で調べてみたら、表題の佐渡裕の最近出た文庫本だった。
昨年のベルリン・フィルデビューにひっかけて出版社が過去のエッセイをまとめて出したものらしい。題名のない音楽会や、辻井伸行ピアニストの番組など佐渡裕の姿をテレビで見る機会は多く、現在の活躍を知っているので、彼の若かりし頃の苦労話には興味深いものがあった。前述のジュリーニ訪問は、彼がミラノに創設された若い音楽家たちによる交響楽団の指揮者に招かれ、その楽団を引退したジュリーニがときおり指導していたというような話題だった。
佐渡裕がベルリンフィルデビューをする前にこのエッセイは終わっているのだが、先の小澤征爾と村上春樹の対談本と同じく、演奏家の体験談というものはとても面白い。
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