「銃・病原菌・鉄」の補遺の日本についての翻訳(非公式)を読んで
この補遺的な日本人論において、縄文時代の日本が、非常に食料に恵まれた地域であり、狩猟採集によって食料を得ていたにも関わらず、住居は定住型だったという指摘は、啓蒙的だった。定住生活は、縄文時代を特色づける遺物である大型の土器類がそれを示すということで、なるほどと合点がいった。
http://cruel.org/diamond/whoarethejapanese.pdf
確かに持ち運びが困難なほどの大型の土器を抱えての移動は非常な困難を伴っただろうことから、狩猟採集生活を送っていたにも関わらず、彼らが定住していたという推論は至極納得できることだ。
かつての学校教育では、縄文時代は狩猟採集生活であるとされていただけだったが、果たして定住していたとかいなかったとかを教科書で教わっただろうか?記憶があいまいだが、定住ということは強調されていなかったように思う。
これが啓蒙的だったというのは、定住型の住居跡の遺跡が日本各地で出土しているにも関わらず、私の脳内ではどうも縄文時代=定住という常識にはなっていなかったからだ。無知・無関心が恥ずかしい。
(縄文時代の定住に触れたウェブページ)
http://samuraiworld.web.fc2.com/rediscover_joumon.htm
http://www.wound-treatment.jp/next/dokusyo/281.htm
http://www.pat.hi-ho.ne.jp/hirosilk/osha001.htm
http://bunarinn.fc2web.com/kodaitatemono2/jiyomonnmura/jiyomonmura.html
http://www.asyura2.com/0311/bd31/msg/880.html
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=244240
http://joumon-juku.com/zatkan/10.html
http://hensuiryuu-taijyutu.seesaa.net/article/216592823.html
http://soundsteps.jugem.jp/?eid=686
http://archaeology.jp/journal/con20abs.htm (考古学会論文要旨)
http://sakudaira.info/history/2011/04/28/ (長野県の佐久地方)
さて、これは特にこの翻訳に出ていたのではないが、同じ遺跡に数千年に渡って縄文人たちが住み続けたことを示すような複合遺跡があることでも、狩猟採集生活にもかかわらず定住していたという推論が成り立つのだろう。
その定住を可能にしたのが、氷河期が過ぎて、温暖化していくにつれ日本列島の大部分が落葉広葉樹林化して多くの木の実(ナッツ)類が取れるようになり、また淡水・海水ともに豊富な漁獲や貝類なども収獲できたことだと指摘されている。
縄文土器があまりにも日本式の新石器時代とペアになっているので、狩猟採集イコール住居移動型、放浪型という至極当然なモデルが逆に思いつかず、縄文式の定住型の特異さに思い至らなかった。
発掘・出土の程度にもよるのだろうが、炭素測定法によると今のところ縄文式土器が「全世界で」最も古い土器になるのだという。これも環境変化に伴い日本列島が人々の定住を許すようになったことの賜物であり、他の世界各地で土器が使用されるのは、現在の出土物からの推定では、相当時代が下り、農業により定住が可能になってからだとされる
日本列島の特異さのもたらしたものであり、縄文人の直系の子孫にあたるかどうかは判然としないが、日本人のナショナリズムをくすぐる指摘でもある。。ただ、その一方で作物の栽培、家畜の飼育に頼らずとも、多くの人口を養えるほど国土が豊かだったがために、縄文時代は約1万年の長きにわたり、当初は先進的だった日本の縄文生活も延々と約1万年も継続したという。
ナショナリズムと書いたが、この日本についての補遺が日本で出版されないのは、朝鮮半島と日本列島の人々の対抗意識を赤裸々に描いていることも理由の一つであるかもしれないし、少々日本人にとっては突っ込みどころがある点にも理由があるのかもしれない。
興味のある方は、ぜひ昨日の記事からリンクをたどってpdfファイルを閲覧してみることをお勧めする。
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