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2012年4月28日 (土)

文庫本が出たので『銃・病原菌・鉄』(草思社)をようやく読み始めた

我々現生人類であるホモ・サピエンス・サピエンス(旧人ネアンデルタール人はホモ‐サピエンス‐ネアンデルターレンシスと言うらしいが、最近の知見では、現生人類にもネアンデルタール人の遺伝子が少し入っているらしい, 別記事だが、1997年の時点で書かれた表題作ではネアンデルタール人は現生人類に絶滅させられたとされている)が作り上げた現代文明がまだ氷河期を経験していないことはつい忘れがちだ。

本ブログ子は、学生時代に読んだ安部公房の『第四間氷期』が忘れられずに、地球温暖化を危惧しつつも、現在が間氷期であることをときおり思い起こしている。

先に太陽の磁気反転が確認され、その冬眠と呼ばれるほどの活動停滞がどうやら本物らしく、数年前の関連ニュースに触れたこのブログの記事も少なからぬアクセスをいただいたが、江戸時代の八代将軍吉宗の頃の時代(ヨーロッパ音楽史では、ちょうど大バッハの時代)の小氷河期に、記録によると同じように太陽黒点が消えた状態となっており、どうやら太陽の活動の低下 → 太陽表面の黒点が減少する → 地球が寒冷化する という各現象間には因果関係が認められるということらしく、今回の太陽の状態からみてもそう遠くない将来に小氷河期がおとずれる確率が高まっているということのようだ。

このようなシミュレーションのためには、それこそ「京」などのHigh Performance Computer (HPC, スーパーコンピューター)の出番だと思うのだが、シミュレーションのためのモデルの策定は難しそうだし、パラメーターとしてそれに用いる観測データもまだまだ乏しいのではなかろうかと危惧する(このあたり素人談義。というより全篇素人談義だが。)。

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さて、朝日新聞が2010年にこの10年間で最も重要な本であると宣まった表題の『銃・病原菌・鉄』 (Guns, Germs and Steel The Fates of Human Societies by Jared Diamond 1997, 2000年日本語版 2012年文庫版) だが、ハードカバー2冊で書店で手に取ることはあったけれど、なかなか購入に踏み切れずにいたところ、ようやく最近草思社としては珍しく?文庫版が刊行された。文庫とは言え相当高価な部類に入るのだが、何とか購入して、ようやく読み始めた。

西洋人の本に多いのだろうが、このような一般向け(と思う)の本でもまえがきが結構長く、また、すでにあれこれと書評などからの予備知識のような粗筋的先入観、バイアスも入っていることもあり、まずはパラパラと興味のある章から読み始めてみた。病原菌に関する章やアフリカに関する章を読んでみたが、これは面白い。(ただ、プロローグで、「環境決定論」について触れてはいるが、やはり「環境決定論」的な主張だと思うし、こうなってしまっている現状の原因を探り説明を加え、決定論的な解釈に至るということは、一面では過去肯定でありかつ現状肯定、過去の人類の罪悪の免責という誹りも受けることにもなるのではないかと思った。)

そういう根本的なところでの疑問はありながらも、このような大風呂敷的な展望が得られる概観書は面白い。あらゆる理論は仮説でもあり解釈でもあると思うが、このような壮大な仮説・解釈には心を揺さぶられる。(原書はもちろん、翻訳も読んだことはなく、竹内久美子の受け売りだがドーキンスの「利己的遺伝子」説だとかもそうだった。)

さて、これに絡めて検索していたら、増補版の「日本人とは何か」の日本語訳があるのが分かり、読んでみた。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-7392.html

これも訳者が脚注でツッコミを入れているような、書かれている対象としての我々日本人からすれば偏った、不正確な記述もあるが、日本人起源論について粗雑ながら大づかみに要領よくまとめてあり、刺激的だし、ここから議論が出発することもあるだろうと思った。これが正規に出版されないのは惜しいと思う。

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コメント

本書は、たしか今世紀になってすぐの頃に、単行本で読みました。たいへん興味深いものでした。文庫本で出たとのことで、再び多くの人の話題になるのかな、と思います。柔軟な環境重視論という印象でした。

narkejpさん コメントありがとうございます。ずっと読みたい本ではあったのですが、ようやく読み始めました。話題になり、また高い評判なのもよく分かるように思いました。

ただ、本質的な点ではありませんが、私の記事の冒頭で触れたネアンデルタール人との混血があったという最近の報告のように、原著の初版から10年以上も経過すると、この本で断定的に書かれていた説も大きく修正されるものだということもわかり、結構興味深いものでした。

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