5月18日 NHK総合で自閉症に関する浜松医科大の研究の番組
昨日記事にした5月14日のQさまの自閉症問題だが、自閉症を安易に「病気」に分類しさらにそのイメージイラストとして抑鬱状態(いわゆる「引きこもり」状態)を示すようなものを説明的に付け加えた件は、いつの間にやら番組ホームページにおわびと訂正が掲示されていた。
ネットでは相当話題になったようだし、このホームページのBBSにも多くの訂正依頼があったのだろう。(Yahooニュースの記事に出ていた)
さて、この問題のなりゆきをネットで見ていたら、自閉症関係ではこの5月18日にNHKが昨年の3月に発表された浜松医科大による自閉症の原因と血液検査でわかるという研究結果を元にした番組を放送することが分かった。内容を検索してみると相当衝撃的な内容らしい。
念のため検索すると、浜松医科大学の関係するページに下記番組の予告のほとんどの内容が出ていることが分かった。
NHKの番組ホームページは これで、
「友達の輪に入らず、一人でばっかり遊ぶ」「まわりの空気が読めず、突拍子もない発言をしてしまう」などという言動が目立つ“発達障害”。日本でも最新の調査で患者が105万人(ADHD患者)との推計が出されるなど、増加しています。中でも、アスペルガー症候群を含む「自閉症スペクトラム障害(ASD)」は、「性格の問題」として、見過ごされるケースが多く、早期発見が課題となっています。ところが、この課題が大きく改善されるかもしれません。浜松医科大学の研究チームが、これまではっきりと分からなかったASDの脳のメカニズムを解明。さらに子供時代にASDかどうか、血液検査で簡単に分かる方法を開発したのです。ASDの科学的な分析が可能になる上、早期発見の有力な診断方法になると、世界的な注目を集めています。 番組は、世界に先駆けて日本で開発された最新の血液検査によるスクリーニング方法について詳しく紹介、またASD社員を抱えるある企業の取り組みを取材する中で、なぜこれまで見過ごされてきたのか、どう対応していけばいいのか、考えます。
とある。
なお、この件は、以下の通り昨年の3月にすでに報道されていた内容らしいが、見過ごしていた。
毎日新聞 2011年3月8日自閉症患者の脳では、人の顔を認識する部位の神経の働きが低下していることを、鈴木勝昭・浜松医科大准教授(精神科)らのチームが突き止めた。患者は人の目を見ない傾向が強く、「相手の気持ちを読めない」などの障害が指摘されている。自閉症の特徴的な症状の原因の一端が明らかになったのは初めてで、症状の悪化防止に道を開く成果という。8日発行の米精神医学誌に発表する。チームは、18~33歳の患者20人の脳を、陽電子放射断層撮影(PET)という装置で撮影し、一般の人の脳の画像と比較。患者では、脳下部にある顔の認知にかかわる部位「紡錘(ぼうすい)状回」で、脳の活動を調節する「アセチルコリン神経」の働きが最大4割低下していることを発見した。鈴木准教授は「人と視線を合わせないことが、自閉症による脳の機能低下を示している。この症状に早く気付くことで、社会性を養う訓練開始など症状を重くしない対応が可能になる」と話す。【永山悦子】
なお、NHKの番組予告がADHD(Attention Deficit / HyperactivityDisorder)と自閉症を同列に扱っているように読めるが、どのような扱いになるか少し心配だ。
この番組を見てみないことには何とも言えないが、昨年の新聞記事以降、新たに血液検査による診断ができるようになったということだろうか。さらに自閉症水銀原因説とそのキレート治療などとも絡んで興味がある。
メカニズムや原因が分かってきたということは、「治療」の可能性はあるのだろうか?
現在、ASDの中では、アスペルガー症候群、サヴァン症候群のような特殊能力について世間の注目が集まっているし、いわゆる天才的な学者、芸術家、発明家など特定分野に創造的な業績を残した人には多かれ少なかれASDの傾向が見られたとの指摘も多いが、「治療」はそのような芽を摘むことにもなるのか?
また、「優生保護法」的な処置が行われる可能性も非常に懸念される。注目したい。
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追記:2012/05/20 「急増する"大人の発達障害"」という番組を見て
このNHK総合の「情報LIVE ただイマ!」という番組は初めて見たのだが、土日の朝の情報番組の金曜日の夜版といった趣で、MCを俳優としても活躍しているコメディアンの原田泰造(ネプチューン)が務め、女優の冨士純子やサンドイッチマンの富沢、有識者などがコメンテーターとして参加するものだった。前半は、東電の値上げ。
注目の浜松医科大のASD(自閉症スペクトラム障害)の研究成果は、番組全体として取り上げられたのではなく、50分ほどの番組の後半の23分からの特集的な取り扱いで取り上げられた。結果的には生放送らしく、あまり要領のよい十分なまとめ方ではなかったので、このようなデリケートな問題を生放送でやる意味があったのか疑問だった。また特集の前には、スタジオ内のおかしな座り位置で若い女性タレントがレポートするようなコーナーもあり、普通に見ていれば気にならないのだろうが、こういうシリアスな内容にはふさわしくないと感じた。ただ、それでも何気なしにこの番組を見て、正しい知識や関心を持つ人が増えることはあるのかも知れない。
主として、知的障害が無く、成人してからの職場での人間関係の躓きからASDと診断される例が最近多いという内容で、現在20、30代の人には子どもの頃にはASDを診断できる医師が少なかったことも、成人になってからのASD診断が増えているという紹介があり、薬剤師や、大学院中退など高学歴の男性の生育史の再現ドラマや昭和大学烏山病院での成人ASDの取り組みなどが実例として登場した。
注目の浜松医科大の血液検査は、8歳以下の子どもの血液中の中性脂肪に含まれる物質(VLDL超低比重リポ蛋白)の多寡によって、少ない場合にはASDの可能性があると早期判定できるというもので、5/19のカナダの学会で発表されるとのことだった。ただ、成人になってから判定できるようなものではないようだ。その幼児時に判定できることにより、「他人の心を読む」ような社会性の訓練を早くから行えるという効果を期待するということだ。人の顔を見る場合に、ASDの場合、目の周辺に視線をやる比率が「いわゆるそうでない人」(40%)に比べて圧倒的に低い(17%)というような研究結果も紹介された。治療法という段階までは研究は進んでいないようだ。その他、PET(ポジトロン断層法)による診断(上記毎日新聞の記事)も紹介された。
また、現在の日本の就活では、対人コミュニケーション能力が極度に重視されている(高倉健のような「不器用ですから」は許されない社会)が、その一方でデンマークのIT企業では、ASDの人の集中力、こだわりなどのパーソナリティを活用してプログラムのバグ取りに大きな効果を上げているなどの事例も紹介された。今回の研究が、レッテル貼りにならないような社会としていく必要がある、などのコメントも出されたりした。(番組冒頭の50代女性からのメール紹介がすべてを語っていた。)
これまで必ずしも科学的に語られることがなかったASD(心理学、精神医学はどうしてもそのような傾向があるのだろう)が、生化学や行動科学といった観点で有意なデータが得られてきたという点で、エポックメーキングなのかも知れない、と思った。
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