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2012年5月 1日 (火)

毛利家の至宝 国宝 雪舟の「四季山水図」 サントリー美術館

黄金週間。今年は、カレンダー通りだと5月1日(月)、5月2日(火)の平日で区切られた前半3連休、後半4連休となるが、この平日2日を年次休暇とする人の場合、なんと9連休という長期休みとなるのでうらやましい。

今年になって子ども達が幼かった頃の博物館(ミュージアム)詣りの習慣が久々に復活したかのように、昨日昭和の日4月29日(日)には、また美術館に出かけてきた。「春過ぎて夏来たるらし」のごとく、一挙に初夏の陽気となり、上着を脱ぎ、腕まくりをしながら井之頭五郎の沖縄料理の店が実在するのだろうかと東口側の路地を歩き、結局は見つからず、昼食は熱いものより冷たいものをということで入った中目黒のつけ麺の店(三ツ矢堂製麺)は、満員の盛況だった。

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この4月の初めの国立新美術館でのセザンヌ展に続いての六本木行きで、今度の行き先はこの前美術館に行くときに通って、帰り立ち寄った富士フィルムのミュージアムのあるミッドタウン内のサントリー美術館。そこで開催中の「毛利家の至宝」展を見てきた。(今回も大人は無料招待券だったが、高校生はクーポン割引で900円。中学生はここも無料)

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この防衛庁跡地の再開発地区の「ミッドタウン」は、江戸時代には長州藩の毛利家の下屋敷(といっても上屋敷が手狭になったため、実質的にはこちらが藩主とその家族の江戸での住居であり、実質的には普通いわれる「上屋敷」として使われたらしい)があった場所ということで、そういえば明治の海軍は薩摩であり、陸軍は長州と呼ばれたように、旧長州藩閥主導の陸軍創設(村田蔵六=大村益次郎、山県有朋、桂太郎の流れ。児玉源太郎、乃木希典などを輩出)だったがために、廃藩置県にあたり旧長州藩の屋敷を接収して、陸軍の歩兵第一連隊の駐屯地としたものではなかろうか?

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今回の展示は、そのミッドタウン竣工の5周年を記念して、旧毛利屋敷の縁により山口県防府市の毛利博物館が所蔵する主要な宝物を借り受けて展示したものだという。国宝、重要文化財が数多く、歴史や古美術に興味のある向きにはとても魅力的な展示だと思った。

白眉は、雪舟等揚作の大作国宝「四季山水図」(山水長巻)で、16メートルもある長大な巻物の隅から隅までが展示され、じっくりと鑑賞できたのは、まことに貴重な体験だった。

水墨画の良しあしはよく分からないが、一緒に見ていた次男が、建物などは平面的な描き方ではない一種の遠近法が使われていることに関心していたように、立体感があり、また遠景と近景は(これこそが水墨画の真骨頂なのかも知れないが)、遠景を「空気遠近法」的に描き、近景はくっきりと克明に描いているのが感じられもした。また、人工的な建築物などの描線はフリーハンドではなく、定規のようなものを使用しているのではないかとも見てとれたりもした。雪舟のどこがどのように優れているのかは、日本画の鑑賞眼が無いためよく分からないのだが、優れた眼を技術を持った画家ということは何となくわかった。中国の山水や人々の四季を描い、長い絵巻物ではあるが、その画面の移り変わりは実に自然で、その風景の中に溶け込むような幻想をも見る心地がした。

    山水長巻を紹介しているホームページ

その他、毛利家の家宝毛利元就の三矢の教えのもととなったような教訓状徳川家康の防長安堵状(起請文)などの貴重な古文書や、毛利家の祖とされる鎌倉時代の頼朝政府の官房長官的な役職(政所の別当)を務めた大江広元の大江家に関係のあるというような注釈がつけられた平安時代の史記の写本など、さまざまな書画骨董や武具、衣装、茶道具、什器などが展示されていたが、興味深い展示としては、足利義満が明の皇帝から日本国王に封じられたという、「義満さん、いくらビジネスのためのお墨付きがほしいとはいえそれはへりくだり過ぎでしょう」とか、「天皇になろうとした将軍」とか言われる元になった、「日本国王」の木の印鑑が、大内氏を経て毛利氏が受け継いで、家宝としていたとのことで、それが展示されていたのが面白かった。

昨年の出光美術館の雰囲気のことを先日辛口に書いたが、同じ古美術系でもサントリー美術館は、本業が扱っている商品がコンシューマー向けで企業イメージを重視し、また大阪商人系ということもあるのだろうか、係員の応対も品よくスマートで、気持ちよく鑑賞することができた。

混雑度は山水長巻のところが渋滞気味だったが、混雑というほどではなかった。3階からエレベーターで4階に昇り、そこから順路となっているのだが、一緒にエレベーターで昇ったグループとタイミングをずらせば、ゆったりと鑑賞できるように思う。

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地下鉄日比谷線の六本木駅への帰路に立ち寄った六本木ヒルズも、数年前に話題になった再開発地区だが、漫画の「ワンピース展」も行われていることもあるのか、まだ人々を引き付ける引力があるのか、ミッドタウンの落着きに比べて、少々雑然とした雰囲気だった。円形の巨大ビルで、丘(Hill)の地形を使っているせいもあるのだろう、初めての者には位置関係が把握しにくく、周囲をぶらぶらと歩き、テレビ朝日社屋のエントランスを見物して早々に退散した。

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