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2013年9月28日 (土)

コミック(アニメ)「銀の匙」と中勘助「銀の匙」

9月も最終日が近づきつつある。4月開始の年度では、上半期が終わることになる。

先日の台風の後、彼岸を経て、涼しくなりつつあったが、秋晴れに誘われて蝉がこの晩夏の名残を歌っていた。

上半期の最終週の今日土曜日、人気の高さが話題となったNHKの朝ドラ「あまちゃん」が最終回を迎えた。コネタ満載という意味では面白かったが、ここ数年間の朝ドラ(*)を録画視聴で見続けた者としては、質の点ではとりたてて高度だったわけではなく、偉大なるマンネリに風穴をうまく明けたという感じではなかろうか?

(*)てるてる家族、どんど晴れ、ちりとてちん、つばさ 、ウェルかめ、ゲゲゲの女房 、てっぱん、おひさま、梅ちゃん先生、純と愛 など

朝ドラの女性ヒロインの半生記というマンネリ的・伝統的モチーフは、来年の上半期の村岡花子訳の「赤毛のアン」に影響されたのではないか、という分析をあるところで読んだが、うべなるかなと思った。前回の「純と愛」は、面白かったものの、この朝ドラの固定視聴者層にはアン・ハッピーエンドや不要になった登場人物を死なせてしまうような部分がエキセントリック過ぎた感はあったが、今回の三世代のマーメイドによるドラマは、そこまで奇矯さを際立たせず、コネタが分からなくても、ついて行ける一貫した伝統的な半生記性も持ち合わせていたのも人気の秘密だったのかも知れない。

さて、この春に遅ればせながら家族ではまったファンタジーコミックの巨編『鋼の錬金術師』の作者荒川弘(あらかわ・ひろむ)という女性漫画家(*)が、今度は実体験に基づいたリアリズム系の「銀の匙(Silver Spoon)」というコミックを発表していて、それがこの夏シーズンの(深夜)アニメ時間帯に放映された。

女性漫画家の出身校の北海道の農業高校を舞台にした現代的な青春もので、食と生命、農業への強い意識がうかがわれるもので、その点同じ農業系の学校(農大)を舞台にした「もやしもん」とは若干方向性が違うようで、こちらの方がシリアス路線だろう。

書店の平積みコーナーでも見かけ、評判は幾分知ってはいたが、アニメーションが面白かったので、コミックも読み始めた。

「銀の匙」というと、古い世代にとっては、例にもれず、中勘助の小説「銀の匙」を思い出した。私が以前求めたのは、ちくま文庫の日本文学全集に入ったものだった。

神戸の灘中学・高校でこの「銀の匙」をテキストに国語授業を行ったことで有名になった橋本武氏が、つい先日長寿を全うされて亡くなったと新聞に出ていたが、その前に岩波ジュニア新書で出されていた「<銀の匙>の国語授業」を入手しており、ざっと読ませてもらっていた。

何も文庫本一冊ですべての授業を行ったのではなく、あくまでも現代国語の教材として、橋本氏自身が生徒のために毎回膨大なプリントを準備して、関連する故事来歴や様々な言葉の意味などを解説し、生徒には要約や感想などの課題を課すと言った、綿密なものだったようだ。

(*) 恩田陸(りく)、有川浩(ひろ) 桜庭一樹 など著名な女性作家だが、字面だけでは男女が判断ができない人が増えているのだろうか? 

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橋本武先生の長きに渡る甚大なるご貢献とご活躍ぶりに深く感謝申し上げ奉ります。

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