村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」
2013年8月11日 (日) 村上春樹の旧作品のまとめ読み で、初期の羊男のシリーズ以外の大物は大体読んだと思う。
今年の4月に最新作書き下ろしが発売された時には、職場最寄りの書店での山積みディスプレイを横目で見ていた。その後、妻が比較的早くに図書館から借りてきたのだが、天邪鬼の自分としては、まだ旧作品のまとめ読み中だったこともあり、読まずにいた。
一昨日の昼休み久々にブックオフを訪れたところ、初版本が棚に2冊陳列されていた。時間の流れが速すぎるのだろうが、すでに話題の本ではなくなってしまっている。ただ、ベストセラーこそ中古書店に出るのが早いし、また中古書店側でも早く入手すれば私のように少し高くても買う人がいるという目論見で、少し高めで購入したりもするらしい。これが一年もすれば、「ハリポタ」同様投げ売りになってしまうのだろう。
帰宅してから、就寝前に読み始めたところ、先が気になるミステリ仕立ての展開のせいか、相当のスピードで読み進めたのだが、途中で爆睡。しかし、なぜか4時頃目が覚めてしまい、そこから6時半まで一気に最後まで読んでしまった。そのため、9月25日は少々寝不足だった。
この小説は、村上作品の中では、リアリズムの系譜になるのだろうか?取り立てて平行世界や別次元めいたトリックがあるわけではなく、奇矯なキャラクターが登場するでもなく、「ノルウェイの森」の「リアリズム」に比較しても、とても普通の小説に感じられた。むしろ普通過ぎると言っていいのかも知れない。エンターテインメントとしても「軽く」読めるようにも思えた。
解決されない謎はいくつか残りはしたが、それもこれまでの作品の比ではなく、とても少ない。そのため、不安定な読後感は残らないのかも知れない。
ネタバレ的になるが、最終章は、それまでと文体も違うようで、少々とってつけたような感触がした。
それにしても、村上春樹の小説の登場人物の存在感というのは、わざとなのかも知れないが、人工的で希薄なものがあるようだ。イメージが結べないというか、ピントが甘いようにも思える。
精神的に弱さのある美少女(美女)が、一貫したモチーフのように思えるが、この作品でもそのヴァリエーションが見られた。
さて、前回の「1Q84」では、NHKの受信料集金人への執拗なほどの固執が見られたが、今回は名古屋という町がその対象のようにも思えた。何らかのルサンチマンなのだろうか?
なお、「巡礼の年」は、直接にはリストのピアノ作品集の「巡礼の年(報)」から取られているのだろう。作品中に、繰り返し「巡礼の年」のラザール・ベルマンによるLP全集3枚組が登場し、ブレンデルのCDも登場した。作品中に登場するピアニスト、友人の父親のエピソードも日本的な「巡礼」を思わせた。
Liszt - Années de pèlerinage - I. Suisse - 8. Le mal du pays
◎ラザール・ベルマンによる全集から (小説中で言及されたものと同じ音源か?)
◎ジョルジュ・シフラ(小説とは関係ないが、この演奏が好きだ)
◎アルフレート・ブレンデル の演奏も 言及されているが、Youtubeでアップされているそれらしき音源のものは音質があまりよくない。
「巡礼の年 第1年全曲」 (テレビスタジオでの録画か?) を発見した。
Liszt anni di pellegrinaggio libro 1 - brendel
35'29"あたりからLe mal du pays が演奏される。
直リンク Le mal du pays
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