中勘助『銀の匙』(角川文庫)
購入して読み進めたところ、以前の「ちくま文庫」は入手したことはしたが、前編の部分も全部読み切っていなかったことが分かった。
今回、ようやく通読できたことになる。題名だけ知っていて、読んだつもりになっているような古典は意外と多いようで、うかつなことは書けないものだ。
角川文庫の場合、200ページほどの薄いものなのだが、ポイントの小さい活字で、ほぼ一行がほとんど文字で埋まっていて、司馬遼太郎作品や池波正太郎作品のように、短い文で改行されることが無いため、薄い本ながら読み応えはあった。
幼年・少年時代の回想録という体裁なのだが、特にその自然描写が詩的で詳細的確なのに驚かされた。時には、独特な擬態語やオノマトペがあったり、ひらがな続きで、どこで句が途切れるのかが分からないような文もあったりしたが、何度も読み返してもよいような文章であり内容だった。個人個人が、こういう回想記のようなものが書くことができれば面白いだろう。
このような古典がなぜ青空文庫に入っていないのだろうと調べたところ、作者の中勘助の生没年は、1885年(明治18年)5月22日 - 1965年(昭和40年)5月3日) ということで、まだ没後50年を経過していないということが分かった。長命な作家であり、この有名な自伝的小説以外にも、多くの作品を残しているということだ。
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