モーツァルト ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 K. 478
モーツァルト全集のMP3での取り込みは順調に進んでいる。高価な全集だけあり、CDの盤質がよいのかも知れない。読み取りのエラーが少ないためか、時には20倍など非常に高速なリッピングが行われている。本来このような高速取り込みは、音質にはよくないのかも知れないが、まずは190枚をきちんと取り込んで楽しもうと思っている。
できれば、ケッヘル第1版と第6版、および現在判明している作曲年代(完成年代)でのソートのために、iTunesのタグのフィールドを工夫して使えないかと思っている。これで整理しておけば、エクセルへの書き出しも容易で、ディスコグラフィーが自動作成できるようなものなので、とても重宝なものだ。タグの 「グループ」 content group に ケッヘル第1版の番号を入力してはいるが、第6版と年代をどこに入れたら入力とデータとしての使い勝手が便利だろうか?
(9/15追記: グループ欄に、ケッヘル第6版を入力することにした。曲名には第1版を記載するので、これの方が利便性が高いようだ。ただし、第6版以降のプラートやタイソンによる筆跡、用紙の透かしによる年代鑑定という客観的な方法により、第6版ではK6版-300番台つまりパリ旅行中の作品とされた著名なピアノソナタが、すくなくともパリからザルツブルクに戻って以降の作品であり、「トルコ行進曲」付などは、「後宮からの誘拐」との関係で、ウィーン時代の作品だとみなされるようになってきたため、第6版の番号によるソートでは最新の作曲年代順のソートにならないのが、まだ悩みの種だ。作曲年代はどの項目欄を使えばよいだろうか?)
さて、これまで取り込んできて、久しぶりにじっくりと耳を通した曲の中で、特に印象に残って、書き付けたい意欲が出たものを少し書いてみようかと思っている。その第1弾。
Mozart: Piano Quartet #1 In G Minor, K 478
1. Allegro 2. Andante 3. Rondo: Allegro Moderato
Beaux Arts Trio [Menahem Pressler (p), Isidore Cohen (vn), Bernard Greenhouse (vc)] & Bruno Giuranna (va)
第1番、ト短調は、モーツァルトの宿命的な調性といわれるト短調を主調に冠している曲なのだが、交響曲第25番、第40番のように人口に膾炙したりしておらず、弦楽五重奏曲第4番のようにゲオンや小林秀雄が取り上げたりなどのスポットライトが当てられていない。
作曲の時期的には、前後には、ピアノ協奏曲第20番ニ短調(K.466), 第21番ハ長調(K.467), 第22番変ホ長調(K.482), 第23番イ長調(K.488)、第24番ハ短調(K.491)などの多彩な名曲群が控えている時期であり、「フィガロの結婚」(K.492)の年代でもあり、モーツァルトの創作力が頂点を迎えていた1785年から1786年の時期でもある。
ピアノ四重奏曲は、この第1番のほかは、この後作曲された第2番変ホ長調K.493の2曲しか残されなかった。当時は、音楽愛好者のレベルが高く、特に室内楽は、愛好者が自ら仲間内で楽しむために新作の楽譜を購入するという需要があったのだというが、これら2曲は、当時親しまれていたピアノ三重奏曲とは異なる編成でもあり、また、演奏技巧や内容が「難しい」と思われたためらしい。(後世の作曲家の作品では、シューマンとフォーレがこのジャンルに挑戦しているが。)
室内楽なので、ピアノ協奏曲とは違い、冒頭からピアノが登場するし、ピアノ協奏曲ならオーケストラに任されるような伴奏的な役割をピアノが担うこともあるので、いわゆる「書法」的にピアノ協奏曲とは異なるのだが、これら二曲の魅力的な楽想は、このままピアノ協奏曲としても十分、上記の名曲群と妍を競うほどのものだと思う。
実際、モーツァルト自身、いくつかのピアノ協奏曲の管楽器のパートなどなしでも室内楽的に演奏できるような指定をしているものもある(残念ながらこのバージョンは、「全集」には含まれていないのだが。)くらいなので、室内楽と協奏曲の境は意外に低かったのではないかと考えたりもする。
第11番K.413についての解説(Mozart con garazia)
楽長モーツァルト氏は尊敬すべき聴衆の方々に新たに作曲されたクラヴィーア協奏曲三曲の出版を発表した。 この三曲の協奏曲は管楽器を含む大管弦楽団でも、単なる四重奏、即ちヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1とでも演奏可能であり、本年四月初めに出版される。 (浄書し作曲者自身で目を通した後)予約注文者にのみ分配される。 予約は今月20日から3月末まであり4ドゥカーテンであることを付記しておこう。 彼の住居はホーエン・ブリュッケ、ヘルベルシュタイニッシェ・ハウス第437の四階にある。
・ピアノ協奏曲第6番変ロ長調 K.238
・ピアノ協奏曲第12番イ長調 K.414(385p)
・ピアノ協奏曲第13番ハ長調 K.415(387b)
・ピアノ協奏曲第11番ヘ長調 K.413(387a)
・ピアノ協奏曲第8番ハ長調 K.246
・ピアノ協奏曲第14番変ホ長調 K.449
ジャン=フィリップ・コラール(ピアノ)
ミュイール弦楽四重奏団
録音:1988,89年(デジタル)
さて、この充実した音楽が、あまり声高にこれらが褒めそやされることは無いようなのがこれまで意外におもってきた。
ト短調という「名前」で、確かに第1楽章が「ベートーヴェン」を予言するような力感のある短調で開始され(ベートーヴェン的だから素晴らしいというわけではもちろんないが)、それはそれで素晴らしいのだが、第2、3楽章は長調が主調で、特に第3楽章のロンドは、何とも言えずに巧まず気取らない第1主題から始まり、いかにも「モーツァルト」的な音楽を味わうことができる。
むしろ、第2楽章、第3楽章が悲哀に満ちた第1楽章の曲調と比較して物足りないという意見もあるのかも知れないが、この長調の2つの楽章は、聴いている分でもても密度の濃い書法で書かれているようであり、そうは言ってもも力みや淀みもなく、その流れに浸ることができる。
少なくとも、ピアノ協奏曲が愛好されるのと同じくらいは愛好されてもしかるべきだと思うのだが。
ボーザル・トリオとヴィオラのジュランナの演奏と録音が素晴らしい。1983年の録音らしい(録音の詳細データは、「全集」の書籍部の最後に楽曲解説と一緒に掲載されてるので、確実なデータがネットでは見つからない)が、プレスラーのピアノは、明瞭で輝かしいが、決して華美ではなく、これほど「いい音」のピアノ録音はなかなか聞けないのではないかと思う。
参考動画:
Vn: Frank Peter Zimmermann
Va: Tabea Zimmermann
Vc: Tilmann Wick
Pf: Christian Zacharias
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