「糖質制限ダイエット」は、以前から主に新聞の週刊誌・書籍広告などで見かけたことがあったが、まゆつばものだと思っていた。何しろダイエット情報というものは、玉石混交であり、雨後の筍のように次々と出現し、またそれに対する極端と言えるほどの賛否両論が喧しく、それぞれが誇大広告気味のキャンペーンをするのが常であり、それも背後の医療業界・食品業界的な経済的利益に操られているのが、透けて見えるようなことが多く、またブームは一過性なものが多く、一年も経つと名前すら忘れ去られてしまうことが多いからだ。
(少々特殊な例だが、マクドナルドのハンバーガーを食べ続ける映画 「スーパー・サイズ・ミー」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%BC と、逆に同じような実験をして痩せたという報道 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%BC#.E9.A1.9E.E4.BC.BC.E3.81.AE.E5.AE.9F.E9.A8.93.EF.BC.88.E5.8F.8D.E8.AB.96.EF.BC.89 に見られる極端な差)
「糖質制限」がまゆつばだと考えていたのは、実体験に基づいている。2000年の夏に思いがけず痛風の発作(* 「ほっさ」というと何か違和感があるが、意味の上では間違っていないようだ。)を起こして以来、一念発起のダイエットとそのリバウンドをサイクル的に繰り返してきたが、2010年には4月以降の同僚との昼食習慣がきっかけで、2011年2月の定期健康診断で+15kg(腹囲+8cm)という過去最高値を記録し、その夏には久しぶりに痛風が出てしまった。その反省から、蛋白質や脂質の摂取を大幅に減らした食事(マクロビオテックに近い食事の記事)と禁酒を続けた結果、運動量はほとんど増やさずに2011年末には+6kg(腹囲+-0cm)まで体重を落とせた経験があった。さらにまた、脳の活動エネルギーは、炭水化物由来のブドウ糖だという認識があったし、人類の長年の食料であり、瑞穂の国日本の山国で長年暮らした私の祖先たちも恐らく様々な穀類由来の炭水化物で命を繋いできたのだろうという想像があり、そのように重要な炭水化物を制限するということが、自然に反するように思ってもいた。
*ほっさ【発作】:急に物事が起こること。また、ある動きをひき起こすこと。特に、病気の症状が突発的に起こること。多く習慣性、反復性のものをさす。喘息発作、てんかん発作、卒中発作など。国語大辞典(新装版)小学館 1988
しかし、喉元過ぎて熱さを忘れるの諺通り、まったく容易にリバウンドというものは繰り返すもので、2011年末をボトムとして、2012年,2013年とまた徐々に体重が増えていき、今年2014年の1月の定期健康診断では再びメタボ診断が下ってしまった(実際は2013年の時もメタボ基準を満たしていたらしいのだが、特に指導がなかった)。
その2014年1月の健康診断では、初めてオプション有料診断で提供されている胸部・腹部のCT画像診断を受けてみた。その画像が結構ショッキングだった。皮下脂肪が腹部にたっぷりついており、内臓脂肪の断面の面積も正常の上限基準100平方センチを上回る106.8平方センチという数値だった。(ちなみに100から150が「多い」に該当する。)ただ、腹囲の割には内臓脂肪面積の逸脱がそれほどでもなかったのは、それだけ皮下脂肪を蓄えやすい体質なのかも知れない。この画像の腹部の贅肉はあまりにもあまりの量だったし、ほぼ同じ背たけになった息子たちは、どちらかと言えば痩せ型なので彼らより約20kgほど体重が重いし、腹部のすっきり具合も相当違う。
これまで、メタボ判定の85cmの腹囲という基準に長らく懐疑的だったのだが、画像で内臓脂肪の多さを突き付けられたのは、その認識を覆すきっかけとなった。確かに、腹囲が大きいと内臓脂肪もたまっている。内臓脂肪の多さと尿酸値や肝機能、血液中の脂肪・コレステロールとの間の関係はよくわからないので、一度きちんと健康的に減量して、BMIや腹囲を基準内に下げて、改めて各種指標との関係を自分なりに探る必要がある、と考えた。
特定保健指導を2月から受け始め、運動と食事という変わり映えのしないいつもながらの対策を立てて、減量を始めたのだが、2009年に効果がありながら風邪で挫折したためにウォーキングにあまりモチベーションが湧かないこともあり、それほど顕著な効果が出ないでいた。
(2009年の様子 https://kniitsu.cocolog-nifty.com/zauber/2009/11/post-795a.html 、 https://kniitsu.cocolog-nifty.com/zauber/2009/10/post-ac33.html)
そんなおり、新聞の広告で目にとまったのが、「炭水化物が人類を滅ぼす糖質制限からみた生命の科学 (著者 夏井睦)」という新書で、その広告のコピーとしてある評者が「思考実験として面白い」のように評していたことが印象に残っていたので、物は試しと書店で買って読んでみた。
出版社のサイト:http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334037666
著者のサイト:http://www.wound-treatment.jp/
http://www.wound-treatment.jp/next/essay/sugar-1.htm
この本は、全然ダイエット用の実用書ではなく、炭水化物の人類学的な人類史との関係を医師の著者ながら、想像力を駆使して考察した部分が大部分であり、その意味で壮大な思考実験という評にも納得した。この本の中で、冒頭の一章分、この少々風変わりな医師である著者が、個人的な体験として、結果的に炭水化物を減らした食事を継続した結果、大幅な減量と、各種の健康判断数値(尿酸値への言及は無かったが、肝機能、血糖値など)が改善されたことが書かれていたのが、ダイエット本的な記述だった。
食事に関して、炭水化物がほぼ1万年近く前からのいわゆる古代文明以降の文明生活が行われるようになった「歴史時代」以降に人類の主食になったこと、草食動物の例からも腸内細菌叢が栄養摂取のために非常に重大な役割を担っているらしいこと、カロリー計算の根拠になっている食物のカロリー値自体が非常に大雑把な実際の「燃焼」実験によっていること(植物食の牛が巨体を植物だけで維持し、青汁だけで生きている人もいること、昔の禅僧が粗食だけで長寿を保った話:これは司馬遼太郎はカロリー・栄養素の既存栄養学により批判していたことを思い出した)などなど、首を傾げる点も多少あったが、目から鱗の見解が多かった。肉類などの蛋白質が消化が悪く、コメや麦などの穀類の方が消化がよいという固定観念への疑いも、少々尾籠ながら飲み過ぎの嘔吐物の例など、合点する記述もあった。ただし、気になったのは炭水化物を食べなければ、タンパク質や脂質をいくら食べてもよく、アルコール類も炭水化物由来の日本酒などは駄目だがそれ以外は大丈夫、というように読める書き方は暴論気味だと思った。この著者が成功した食事が、たまたま、ダイエットとして適していたというだけで、なぜそれが「好きなだけ」という表現になるかが疑問だ。個別事例を針小棒大的に語っているようで、議論が飛躍気味な感じだ。(先駆者のサイトは参照したようだが。)また、このダイエット(本来の意味での生活様式、食生活)を継続した場合の思わぬ副作用がどうなのかも気になるところだ。
とはいえ、これにヒントを得て、2011年の取り組み(https://kniitsu.cocolog-nifty.com/zauber/2011/09/post-e738.html)とはほぼ真逆の、炭水化物を減らして、タンパク質を増やすという食生活を試行錯誤しながら始めてみた。
米食は元々減らしていたのだが、肉(と加工製品)、魚(と加工製品)、そして大豆製品(特に豆腐)を毎食摂るようにしたが、しばらくはタンパク質食品の柱を何にするかは試行錯誤だった。
そんなある日、高野豆腐(凍り豆腐、凍み豆腐)が中性脂肪を減らすという長野県のメーカーの研究結果を報じた新聞記事を読み、これが廉価なのと保存性にも優れていて直ぐに調理でき、自分の好みに合うので、妻に協力してもらいながら、高野豆腐の煮物をベースに献立を作ってもらうようにした。以来朝、夕に高野豆腐の大型の煮物を2切れずつ常食。
職場での昼食は、おにぎり2個のみを続けてきたが、おにぎりを1個にして、これに普通のおかずを付けてもらうようにした。また、前回のダイエット時から牛乳を飲んでも消化不良にならないようになりこれまで飲んできた一方でチーズは少し敬遠していたが、昼食に食べるようにした(ただし、最近は昼食のチーズはやめた)。さらに、焼き肉や刺身なども普通に食べるようにし、炭水化物は毎食のごく少量の米飯くらいにするようにした。
従来よりもタンパク質を増やした食事に切り替えて効果が明確にあると感じたのは、目が回るほどの空腹感が訪れないことだろうと思う。逆にそれまでごくまれにあった目が回るほどの空腹感こそが、炭水化物食中心の食生活で生じる低血糖状態なのではないかと思う。
上記新書やウェブの実体験例にあるのとは違い、極端な効果は無かったが、約3か月経過の4月で2kg程度、約6か月の7月現在で、約5kgの減量となった。
カロリー制限や運動量の増加よりも、むしろ強烈な空腹感が生じないために、毎食の食べ過ぎが抑えられ、また間食(柿の種とピーナッツ、いわゆる柿ピーが好物で、よくボリボリとかじっていた。)を必要としなくなり、さらに家族の食事の献立から麺類、パスタ類が減り、タンパク質と野菜料理が増えるように自然に変わっていったことが要因となっているように思う。自分も家族は甘味を取らないわけではないが、それまで食べていた駄菓子類やチョコレートの購入が減り、フルーツ・グラノーラという最近人気のシリアルが口寂しいときの代用ともなっている。
腹囲だが、健康診断時は+7cmで、その後実測すると+11cmほどもあり、メタボ基準を大幅に上回っていたが、それが+2cmほどになってきた。ウキワのようだった腹部の贅肉が落ち、内臓脂肪も多少は減ってきたのだと思われる。腹囲は測り方が難しいが、ベルトの長さは如実に腹囲を反映するので、健康診断ごろより約7cm短くなっているのは間違いない。
また、今回の健康診断時に、それまで問題がなかったのに意外に高くなっていた血圧を、久しぶりに購入した血圧計で計測しているが、家庭血圧的には申し分がないほどの値になっている。
4月の二次血液検査で、尿酸値も下がっているのが確認できたが、やはり痛風が怖いので、尿酸と同様の抗酸化作用を持つビタミンCをいつもより多く摂取すれば効果があるのではなかろうかと思い付き、自己流の保険としてビタミンCのタブレット剤を毎食飲むようにしている。(中には同じように考えている人もいるようだ http://ameblo.jp/asahi-diet/entry-11225181496.html )
さて、これからだが、これまで毎年夏太りを毎年経験してきた。これはおそらく麺類(そうめん、冷麦、そば、など)をよく食べたのが原因だったのだろうと想像している。好きということもあり、つい沢山茹ですぎて、のど越しに任せてつい二三人分を腹に収めてきたのが毎年の習いだったので、この夏は麺類の一食分を一人分に減らし、副菜に必ず高野豆腐のようなタンパク質食品と野菜を加えて食べようと思っている。
なお、炭水化物は減らし気味にしているが、上記の通り完全に絶つような極端なコントロールは行っていない。少々気になるのは、今年になってから、年齢的な要素も強いのだろうが、短期記憶力が弱まってきたことだ。これについては、認知症の問題もあるので、気を付けていきたいと思っている。
炭水化物が中性脂肪を増やし、皮下脂肪、内臓脂肪として蓄積し、それが(なぜか)血液の健康指標を悪くするという因果関係は、よくわからないのだが、今回の食生活を後半年続け、それが尿酸値にどのように影響してくるかにとても関心がある。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2113.html
http://ryouma04.wordpress.com/2011/08/18/%E5%B0%BF%E9%85%B8%E5%80%A4%E3%82%92%E4%B8%8B%E3%81%92%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%E9%A3%9F%E4%BA%8B%E5%88%B6%E9%99%90%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%AE%E7%A8%8B%E5%BA%A6%E5%A4%A7%E4%BA%8B%E3%81%AA/
http://minds.jcqhc.or.jp/n/medical_user_main.php
http://books.google.co.jp/books?id=ui-UAwAAQBAJ&pg=PA3&lpg=PA3&dq=%E4%BD%8E%E7%82%AD%E6%B0%B4%E5%8C%96%E7%89%A9%E9%A3%9F%E3%80%80%E3%80%80%E5%B0%BF%E9%85%B8%E5%80%A4&source=bl&ots=vCKztS0BfR&sig=b5Do0_FYA86gNBbzlRE4tO12ZvQ&hl=ja&sa=X&ei=te7NU4qELMfd8AXkyYDgDA&ved=0CDYQ6AEwBTgK#v=onepage&q=%E4%BD%8E%E7%82%AD%E6%B0%B4%E5%8C%96%E7%89%A9%E9%A3%9F%E3%80%80%E3%80%80%E5%B0%BF%E9%85%B8%E5%80%A4&f=false
さて、効果をある程度実感してから、理論的な背景を知りたくなって調べたら、下記のサイトが見つかった。
◆ゲーリー・トーベス著「ヒトはなぜ太るのか?」を紹介したブログ。
http://itochiaki.jp/senshu/?p=1342
特に糖尿病に対しての効果を期待するもの。
◆「低炭水化物ダイエット」
ロバート・アトキンス博士が考案したダイエット法で、別称はアトキンスダイエット法、ローカーボダイエット。
http://allabout.co.jp/gm/gc/23202/
◆用語
Carbohydrate 炭水化物 カーボ・ハイドレート
Saccharide (glucide, sugar) 糖質 サッカライド、グルサイド
Low carbohydrate diets (食事療法) 低炭水化物食 ⇒ これから 日本語的略語で、上記の「ローカーボ・ダイエット」なる言葉があるらしい。関連語 carbohydrate-restricted diet
同義語(異表記)Atkins Diet
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◆カロリー 生理的熱量 の計算について:空気中の燃焼と、生体内での
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%90%86%E7%9A%84%E7%86%B1%E9%87%8F
◆スイスの研究機関で判明...禁煙で太ってしまう原因は腸内細菌 ... という記事:
http://news.nicovideo.jp/watch/nw758101
◆大便のカロリーについてのQ&A (専門的)
http://www.pariet.jp/helpful/vol58/no599/sp05.html
◆覆るか、肥満の定説 原因はカロリー? 炭水化物? (まだ結果が出ていないようだ)
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO61433170S3A021C1000000/?dg=1
日経サイエンス 2013/10/26
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痛風関連記事:
2004年6月18日 (金) テレビ
2011年7月26日 (火) 尿酸値とメタボ
2011年8月17日 (水) 痛風の痛みはきつい
2011年9月27日 (火) 最近肉や魚をほとんど食べないのでマクロビオティックに近い食事になってきている
2011年10月17日 (月) 痛風のその後
2011年12月26日 (月) 5ヶ月継続した食餌療法と健康診断結果
2012年4月 5日 (木) 尿酸の排出は腸からも。それが低下? (痛風の原因が新たに確認?)
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